時計の秒針の音とキーボードを叩く音が反響する室内。作業に没頭してから随分時間が経ったようだった。



「……あれ?シズちゃん…?」



そういえば暫く彼の声がしないな、と振り返れば俺の作業を待っている内に眠ってしまったようだ。机に突っ伏して眠る姿に顔は自然に緩んで。きっと俺は今、だらしない顔をしているんだろう事は自覚している。

もうちょっとこの可愛らしい寝顔を眺めて居たいけどそういう訳にもいかない。



「シズちゃん。待たせてごめんね、終わったよ」

「んぅ…、…いざ、や」


目を擦りながら寝起きだからか呂律の回らない声で名前を呼ばれると、こう、何がとは言わないが来るものがある。
何となく直視出来なくて窓の外に目を逸らしてみると、真っ黒の中に、黄色い光があった。



「ねぇねぇ、シズちゃん。見て、――月が、綺麗だよ」

「………、あぁ。本当だ」



あの月はシズちゃんみたいだ。
どんな真っ暗闇に立ってもその光を失わないで、優しく強く在り続ける。
俺が、焦がれた存在。



「必ず、帰ってきてね」



3日後に彼はまた任務に出掛ける。
本当は嫌だけれど、本人が前線を希望すればそれに応えない訳にはいかない。
平和を守りたいと自らを武器に変えるその強さが、優しさが愛しくて。



「当たり前だろ、でも――…」



お前の為なら、この命を賭けてやってもいいかもな、と悪戯っ子みたいに笑ったシズちゃんがどうしようもなく愛しくて、そのまま彼の額にキスを落とした。




















愛してるを君に
(I love you.)