拍手SS/忍足謙也
「ユーシユーシって俺の何処がアレと劣るっちゅーねん」
「どうどう謙ちゃん。劣る劣らん言うなら結構劣るんやからしゃーない」
「何やて!?」
だって本当のことやもん。
謙也、成績そこそこ。運動神経も他人よりヨシ。テニスは四天宝寺では上の中くらい。
侑士、成績上位。運動神経は謙也同様。テニスは氷帝ではNO.2らしい。
その他、ルックスだとか性格だとか…その辺に関しては好みがあるから比較対象から除外するとして。
「総合して劣るんは謙ちゃんやね」
「せやから俺は劣ってへんがな!」
「んー…こればっかは女子的意見から譲られへんとこやんなあ」
「絶対、俺の方がええ男や!」
「え?そこ?」
ほうほう、ええ男勝負するんやったら…こりゃ意見は真っ二つかもしれへんなあ。
要はアレやろ?カレシにすんならどっちがええ?ってテーマやと受け取ったで。せやなあ…
侑士はどっか冷たいとこあって謙也は妙に暑苦しいし、デートいうたら侑士はインドア映画館タイプで謙也はアウトドア遊園地タイプ。
それをどう評価するんかはまた好みがあるさかい、比較出来ひんとこにあるわ。
「まあ、そこはアレや。好み問題やな」
「ほな幼馴染みとして答えーや」
「何やねん」
「お前やったら俺とユーシ、どっち取んねん」
……どっち取る、て犬猫拾うようなカンジで言われてもなあ。
正直、どっちもええとこあってどっちも悪いとこある。今は侑士が傍におれへんけど長い間、二人を見て来たからよう分かる。
けど、強いて言うんやったら私は、謙也を選ぶと思う。性格的に謙也の方が落ち着くさかい。
「どっちかいなー」
「そこは満場一致で俺やろ!」
「いやいや、ここは悩むとこやわ」
「何で悩むねん!」
「ほら、侑ちゃんやったらそこは餌付け票取りするとこやで?」
「餌付け!?ほな、俺かてタコヤキくらい奢ったるわ」
「お好み焼きにしてんか?」
「はあ?お前どうせオムソバも食うつもりやろ!」
「そこ!侑ちゃんやったら文句言わずオムソバも食わせてくれるで?」
「……っ」
なーんて、ちょっとからかうでも侑士より謙也の方がオモロイ。
「おうおう、そっこまで言うならどっちも奢ってやるわい!」
「そうこなくっちゃ」
そもそも比較する方がおかしいねん。
謙也は謙也で侑士は侑士。どっちもええ男やし、世間一般からしたらどっちも申し分ないわけやし。
万人に受けたい言うんは不可能なことで、それやったらいっそ自分のたった一人の子にごっそり好かれた方がええと思う。
「ほな、お前の一票は俺のもんな」
「そら奢ってから言いな」
私やったら一人でええ。自分の好きな人だけに「誰よりもジブンがええ」て言うてもらえたらそれだけで。
この話したら単純阿呆の謙也も呑まれて納得するんやろうなあ。
ほんで、その謙也の唯一の子になりたい、っていうんは…今はまだ内緒の話や。
コンプレックスなお話。
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