――赤紙。

それは縦15センチ、横23センチの赤い紙に記された兵隊の召集令状のこと。
受け取り拒否は許されない。徴兵拒否は重罪に問われ、非国民として非難された。

1927年、徴兵令は廃止。引き換えに兵役法が公布。
日本の男子は満20才になると徴兵検査を受ける義務が課せられた。

1943年、徴兵事務の特例に関する件。
これにより徴兵適齢が1才引き下げられ、満19才となる。

1944年、兵役法施行規則改正。
満17才以上の者とすると同時に、満17才未満の志願も可とした。



「召集令状を持って参りました。おめでとうございます」
役場の兵事係を兼務する戸籍係が一人一人の家を回り、そう告げては紙を配っていく。

戦争の激化に伴い、徴兵検査を受けた人のうち現役兵として徴集された人の割合は90パーセント。
現役兵だけでまかなえない兵員需要を補うため、赤紙が乱発されたことはいうまでもない。
某年度の統計を見ると現役徴集者約41万人に対し、赤紙による召集者は約105万人に及ぶという。



血染めの空から降りしモノ/侑士
果てしない空の下君を待ってる/手塚
この役目は譲れない/景吾



誰もが待ち望んでいたように口走る。
誰もがお神のため、お国のためにと突き進んでいく。だけど…

「甲種合格、籤逃れ」
名誉は欲しいが軍隊には行きたくない、きっとこれが本音だった。




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