見なかったことにしてあげる

違う表情で同じ言葉を何度告げられて来ただろう。
その度に返す返事はいつも同じ言葉で...その答えが答えになっていないことも分かっている。別に意地悪でそうしてるわけじゃない。本当のことしか告げてない。例え、それが彼女の望む答えでないにしても。

何故、望む答えが返せないのか。
そこを彼女は考えたことがないらしい。それはとても彼女らしいと思う。
彼女の好きを疑うわけじゃねェが、それが本物なのかどうかおれには分からねェというのが一つ。逆に、おれが本物の好きを彼女に向けた時、彼女がどうなるのか...それが分からねェのが一つ。

個人の感情を全く同じにすることは出来ない。
感情が平等になることは有り得ないことで、どちらかが重くなることもあるだろう。どちらかが耐え切らずに潰れてしまう可能性だって否定出来ない。だから、彼女には軽い返事に思えるのだろう。

あと一つ、未だ表にしていない顔が彼女にはある。
それを見てしまった日にゃ、おれはきっと陥落するに違いねェ。
だから...未だに見なかったことにしてる。ただそれだけのこと。


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