今、顔は見ないで

何度「好き」だと言われただろう。
その度に返す言葉は「そりゃ有難う」だけだというのに、それでも奴はしつこく言い続ける。思った時に挨拶のように、気付いた時にポロッと落とすように...

言葉が届いてねェわけじゃねェよ。きちんと伝わってる。だがな、返す言葉が見つからねェ。
どうせ望む言葉はやれねェし、かといって死ぬほど憎ませることだって出来ねェ。おれだって...同じ穴のムジナ、同じ想いを抱えて生きてんだ。だから...諦めろとも言えやしねェ。

唇を噛む。浮かばれないのはおれも同じ。
奴の気持ちを誰よりも理解してるからこそ、おれには礼を言うしか出来ない。奴の想いと重なるようにおれもまた唇を噛む日々。全く同じようにおれだって顔を伏せる日がある。

今日もまた奴は挨拶のように言葉を発した。だからおれは奴に背を向けて顔を伏せた。


[*前] | [次#]

戻る