大人ぶった態度を見せて

『あなた、月みたいね』
そうせせら笑ったお前もまた月みたいなオンナじゃねェかい。
柔らかい表情の下にある冷たすぎる目。それを隠すかのように今日も口角を上げ、目を細めてただ笑う。ただ笑っているフリをしている。それの何処がおれと違うと言うのだろうか。

そんなお前が見せる冷たい目はいつもおれだけにしか向けてねェと気付くまでにそう時間は掛からなかった。それが...特殊ながらも意味を含んでいることに気付かねェほどおれは馬鹿じゃねェ。
向けられた一瞥。何よりも冷たい目。それが何を意味しているか...

『だったらお前は太陽とでも言うのかい?』
『まーさか。それは無いわね』
『......だろうねい』

ただ一度、そう言った彼女が見せた顔だけが本物だと知った。

『そうねえ、マルコが月なら......私は海でいいわ』

だけどおれは見なかったことにした。
知らないフリをした。気付かないフリをした。彼女の好意、自分自身の気持ち。

昇った月をただただ映す海。
それがおれらだとしたら...きっと触れることは敵わない。


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