気付かれないよう唇を噛んで

何度「好き」だと言っただろう。
その度に返って来る言葉は「そりゃ有難う」だけだというのに、それでも私はしつこく言い続ける。思った時に挨拶のように、気付いた時にポロッと落とすように。

「すっげェ交わされ方」
「.........それでも、聞こえてるなら、いい」

決して望む答えはもらえないけど、それでも届いているならそれでいい。

「いっつもでけェ声で言うから聞こえないはずがねェ」
「イゾウ」
「だったら真面目に答えてやれよ」
「大真面目で礼を言ってんだろ」

それなのに何でだろう...

「好きよ、イゾウ」
「あァ、ありがとよ」

報われない想いが可哀想で、私は今日も気付かれないよう唇を噛んでた。


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