もう戻らない ヒロトが円堂を知ってから、少しずつ何かが変わり始めた。 ヒロトは口を開けば円堂の話ばかりするようになった。最初は、好きなんだなー、とかそんなことしか考えてなかった。だけど、だんだんヒロトの愛が怖くなってきた。あいつの愛は度が過ぎてる。 「ヒロト、今日も円堂に会いに行くのか?」 「うん、毎日見てないと落ち着かないんだ」 会いに行く、その表現には少なからず間違いがあった。ヒロトが円堂に会うのはごく稀だ。大体は、ヒロトは円堂を見ているだけ。そう、ずっと見ているだけ。 「やっぱりこんなのやめたほうがいいって。ストーカーと何も変わらないじゃないか」 「ストーカー?やめてよそんな言い方。俺は円堂くんが好き。だから見ていたい。それだけだよ」 「ヒロト…」 「グラン様、でしょ?レーゼ」 「…………」 俺は、ヒロトが変わってしまうのが怖い。いや、もう変わってしまったのかもしれない。だけど、あの優しいヒロトが失われてしまうのがどうしようもなく怖い。 頼むから今すぐにでも戻ってくれよ―…。 「ねえレーゼ、円堂くんってさ、キスとかしたことあるのかな?ないなら俺がファーストキス貰ってあげたいな」 「ヒロ…グラン様!もうやめてください!昔はそんなじゃなかったでしょう?」 あの頃の、俺に優しく微笑みかけてくれるお前に、 「何言ってるの?俺は何も変わってないよ」 「いいえ変わりました!あなたは変わった!お前は変わっちゃったよ、ヒロト…!」 昔のヒロトに今すぐ会わせて。 「…俺はもう行くよ、レーゼ」 「ヒロト…」 無機質な瞳が俺をとらえた。 もう俺の知ってるヒロトはどこにもいない。 -------------------------- 最初はヒロ→円を書こうと思ったんですが、なぜかこうなりました(笑) 緑川乙女ww ← |