寝顔


「なあ染岡。吹雪は?」

吹雪がまだ起きてこない。だからって円堂、なんで俺に聞くんだ。まあ確かに吹雪がいつも俺の周りをちょろちょろしてんのは確かだけど。

「知らねーよ」
「そっか、じゃあちょっと見てきてくれないか?」

円堂が満開の笑顔で言う。この笑顔に逆らえるやつは果たしているんだろうか。
あ、いや別にヒロトとか立向居の気持ちが分かるとかじゃねぇけど。

とりあえず俺はおとなしく吹雪の部屋に行く。

「おい吹雪まだ起きてねぇのか?吹雪!」

部屋の外からそう声をかけたが返事がない。どうやらまだ寝ているらしい。

吹雪って朝弱かったっけ?
イナズマキャラバンの時は別にそんな感じもしなかったし、むしろ他のやつより早く起きてた気がする。朝から吹雪がへらへら笑ってんのを見て、寝起きで機嫌の悪い俺はさらに機嫌を悪くしていた。ああ、今思うと懐かしい。

乱暴に扉を開けて中を見渡す。ベッドの上に丸くなって寝ている小さな物体が見えた。

「本当にまだ寝てやがる…。おい、吹雪起きろ。練習遅れるぞ」
「ん、んー…」

体を揺らしながら声をかけても吹雪はうーだのあーだの唸るだけで起きる気配は全くない。

「こら吹雪!早く起きろ!!」
「…ん、…そめ、おかくん?…なんだ染岡くん、か…」

一際大きな声を張り上げても吹雪は謎のコメントを残して再び眠りにつくだけだった。

こいつ起きる気ねぇな。

ふと吹雪の寝顔を見ながら思った。
昔はもっと警戒心が強かった。だからきっと他のやつよりも早く起きていたんだろうし、いつも俺が起きたときにはへらへらと作り笑いを振り撒いていたんだろう。
吹雪は誰かに弱い自分を見せるのを拒んでいた。

そんな吹雪が今、朝起きれないという失態を晒している。これは吹雪の警戒が解けたと受け取ってもいいんじゃないか。

「やっと信頼してくれたってことか…」

それに先ほど吹雪は『なんだ染岡くんか』と言ってまた眠りの体勢に入った。
それだけ聞くと舐められてるように聞こえれるが、逆に受け取るとどうだろうか。
俺だから起きない。俺だから甘えてる。そう思えばなんとも可愛らしく思えた。

全部俺の自分勝手な解釈だけど。

「ん、むにゃ…」

眠る吹雪はなんとも幸せそうだ。


…あと5分寝かせてやるか。そしたら起こす。

俺は結局吹雪に甘いんだな。そう思うとなんだか笑えてきた。

俺は吹雪の寝顔を5分間観察することにした。



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完璧じゃない吹雪が可愛くて仕方ない!
どうでもいい話ですが、管理人は朝が弱いです。


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