開けっぱなしのカーテン。窓からは朝日が射し込んできて、部屋を明るく照らしている。ずっと同じ格好で寝ていた為、硬直していて身体中が痛い。昨日、ボクはあのまま寝てしまったようだ。兄上に承諾を得る前になまえの側こうして一夜を過ごしてしまった訳だが、起こされなかったということは兄上は見過ごしてくれたのだろうか。あの兄上が気づかない、はあり得ない。ふとなまえの方を見てみればまだ夢の中のようだった。顔にかかった髪を後ろへ流すようにとかしてやる。衰弱しているものの、可愛らしい姿は変わらずその寝顔に思わずため息を漏らす。無意識になまえの手を握っていたボクは、ふっと笑ってしまった。こんな姿になってしまってもなまえを愛することのは変わることはないのだ、と。多分、これから先もずっとなまえだけだ。なまえだけを愛してる。

「…………あ。」

そう想うあまり手を握る力を少し強めてしまった。なまえが僅かに顔を歪ませたかと思えば、うっすらと目を開けて数秒宙をさ迷ってからボクにたどり着いた。

「アマイモン…おはよう。」

「おはようございます、なまえ。良く眠れましたか?」

「うん、アマイモンが側にいてくれたからいつもより安心して眠れたよ。ありがとう。」

なまえは力無く笑った。それにボクもつられて笑った。なまえにはもう起き上がるほどの力は残されていない。ボクはこうしてなまえの手を握り、ぬくもりを感じることはできる。なまえも握り返してくれる。それから何日か、同じような日が続いた。もうなまえと外へ一緒に行くことはできないけれど、幸せだった。なまえの側にいるだけでいい。…もし、願いが叶うのならば一つだけでいい。なまえの、なまえの病気を治してほしい。そもそも誰に願えばいい、兄上や父上にでも願い乞えば叶うだろうか。いいや、そんなことを考えるより、なまえと一緒にいられるこの一時一時を大切にしなければ。お互いに愛を確かめ合う方法を覚えたあの日から1日のうちに幾度もその行為をした。幸せだった。嬉しかった。なまえもそれは同じようだった。




「……………なまえ、」

それから、間もなくしてなまえは死んだ。まだいまいち実感が沸いてこない。だから、いつものようにキスをした。冷たく冷えた唇。ああやっぱり死んでしまったんだ。じわり。ボクの中に癒えない傷。いつかこうなると解ってはいた。
最初は、ただのきまぐれで、でもどうしてもなまえを放っておけなくて。そこからここまで歩んできた。あーあ、なまえ、早すぎますよ。グールに襲われていたあの日、なまえはボクに訴えかけてたような気がする。空を、飛びたいと。ボクを頼ってくれた、なまえは。今頃、キミは空を飛ぶことができているだろうか。




なまえ、キミと遊ぶことができて楽しかったです。ありがとうございます。それから、愛してます。…ああ、そうだ。もうボクは、二度と恋愛などしないでしょう。ずっとなまえだけです。サヨウナラ、なまえ。




アマイモンは私が死ぬ寸前まで手を握りしめていてくれた。涙が出るほど嬉しかった。貴方は悪魔という身でも、愛するということを知った。大切なものを無くす痛みも知った貴方は、きっと新しい愛を見付けられるはず。ねぇ。私は空を飛ぶという夢を今叶えるから。愛してるからね、アマイモン。さよなら。



永訣

完.


あとがき

アマイモン中編完結です!ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。最後は死んでしまいましたが、暗い感じでは終わりたくなかったので前向きな感じに…といってもアマイモンは後ろめたい感じですが(笑)次はメフィストさんで中編やりたいなあと考え中です。