「はいはいこのままじゃ遅れちゃうよー?ダッシュダッーシュッ!」

誰のせいだこのマジカルウスラトンカチ。こいつマジで付いて来やがった。こいつ曰く、他の奴らには姿は見えないんだとか。それなら、今日一日くらいは…いや、乗りきれそうにねぇ。絶対。ピンクのヒラヒラついた変な服に、なんたらステッキ。アニメか。

「サスケくぅうーん、おはよーっ!」

自称魔法少女を空気と見なし、オレは教室へ入る。とたん耳を塞ぎたくなるようなたくさんの甲高い声に包まれる。虚しくも日常茶飯事だ。うるせー。オレが教室に一歩踏み入れただけで、鞄を机に置いただけで、椅子に座っただけでアイツらは騒ぐ。こっちからしてみれば監視されてるみてーだ。そんなことを思っていると、背後にどす黒い気配を感じて恐る恐る振り返った。

「何ようあの子たちサスケくん見てきゃあきゃあ言っちゃってええ!!」

自称魔法少女からどす黒いオーラが溢れていた。なんなんだコイツ。

「サスケくんのキラキラ学校生活を妨げるものは全てこのマジカルステッキで排除するのみッ!」

あ、そうだ。マジカルステッキっていうんだったなそれ。…そうじゃなくて、今何て言ったんだ?は、排除だと?確かにウザいとは思っているが、半ば慣れてきてはいるから学校生活に支障を来すほどではない。どっちかってーとお前が妨げつつあるかもしれねぇぜ。こいつは黒い笑みを浮かべながらステッキを構える。これはマジで殺りかねない。椅子から立ち上がり、自称魔法少女の方を向き直った。

「おい、頼むから勘弁してくれ。」

「え、でも…。」

「オレがいいって言ってるんだ。いいからやめろ!」

オレが少し強くそう言うと力なくステッキを下げた。安心して再び椅子に座ると、さっきまでの賑やかな声は無くなっていて教室内は静まり返っていた。不思議に思い、チラリと周りを見渡すと皆揃いに揃ってオレの方を見ていた。そしてその瞬間、ある事を思い出す。自称魔法少女はオレ以外の奴らには見えない。すると今オレは他の奴らから見れば誰も、何もないところに向かって話していたという事になるじゃないか。

………さて、この状況。
どうすればいい。


女 U
(まだまだ続く...)