magi/ジャーファルさん




※ジャーファルさんから冷静とモラルの文字が消え失せています





「おねいさーーーーんっ!」

「うわわわわっアラジンくん!?」

シンドリアに数日前から来たアラジンというマギの男の子。
ヤムライハさまの部下である私は、この子にえらく気に入られたようで毎日私の元へやってくる。
そして決まって胸にダイブしてくるのだ。
一番初めこそ驚きはしたものの、それから何度もこういうことはあって、子どもだからもうなんかいいやと最近諦めかけていた。

「アラジンくん、くすぐった・・・い!」

「うーーん聞こえないよー??」

「アラジンくんてばーー!まずいよ、は、早く離れないと・・・、」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ。

今は廊下でこの状況が繰り広げられているわけだが、私の背後から凄まじい音足音らしきものが聞こえてくる。
ああ、ほら来た。

「アーラージーーーーンっ!今すぐ離れなさい!」

「ジャ、ジャーファルおにいさん!?」

まったくどこで察してくるのか分からないのだが、アラジンくんが私にこういうことするとジャーファルさんが光の速さでどこからともなくやってくる。
なんだか24時間監視されているようで怖い。

「大丈夫ですか!?」

「いや大丈夫です慣れてますから。そんなに怖い顔しないでください。」

アラジンを私から引き離し、床に下ろすとくわっと私の方に向き直るジャーファルさん。

「いえ、私は必死なんですよ。貴女の操は私が守ります。そしてその暁には私がいただきます!あのですね、何度も言いますがアラジンはマギなのです。いつ何時貴女にナニを仕掛けてくるかわかりません!」

「ジャーファルさん、ちょっと警戒しすぎですよ。それからいろいろと恥ずかしい言葉大声で言わないでください。ジャーファルさんらしくないですよ。あとナニって何ですか。」

「ナニはナニです。それ以外の何物でもありません!」

「僕はおねいさんにそんな酷いことはしないよ?」

「そうですよね、いくらアラジンくんでもねぇ。・・・っと、私今せっかくの空き時間なんで部屋で休ませていただきますね。」

「ああちょっと待ってください!私今少しだけ時間が空いているので、一緒にお茶でもいかがですか?今後のシンドリアの行く末はたまた貴女との今後の行く末についてゆっくりお話したいことがあるのですが。」

「ジャーファルさん、シン王様さっき仕事サボってましたよ。」

「なんですってっ!?まったくあの人は!悔しいですがまた今度お誘いしましょう。それでは。」

そう言い残してジャーファルさんはまた光の速さで消えていってしまった。

「いいのかい?ジャーファルおにいさん、おねいさんと一緒にお茶飲みたそうだったのに。」

「いーのいーの。」

どうやらアラジンくんには私がついたシン王様がサボっていたという嘘がバレているようだった。
やっぱり、侮れないのかも。この子。
あ、あとジャーファルさんにもこの手はもう通用しないな。
また新しい対策をねらなければ。

それから、少しだけ、ほんの少しだけ、私はジャーファルさんを憐れんだ。


貴女の平和は私が守ります

「なあ聞いてくれよ。さっき真面目に仕事していたのにジャーファルがいきなり入ってきてな、俺締め上げられたんだ。どうしてだろうな。」

「・・・シン王様、すみません。」

「え、どうしてだ?」