【奪うようにキスして】
「大丈夫か?」
「んー、大丈夫だよ。もう少し待ってー!」
なまえは今オレの為に料理を作ってくれている。今日はオレの誕生日だから、最初はケーキを作ろうだなんて言ってたから、甘いもんは勘弁してくれと言った。そうしたら、誕生日はケーキが定番なのにとさぞや残念そうにしていた。それが何だか見ていられなかったから、オレの好きなトマトで何か作ってくれないかとねだってみたところ、目を輝かせて頷いていた。
そして今に至る訳だが、なまえはどうにも手こずっているようだ。元々不器用で、料理のレパートリーも少ないなまえ。下手したら、オレが作った方が良かったんじゃないかと思う時もしばしば。しかし、不器用なりに一生懸命作ってくれているなまえの姿を見ているのがオレはすごく好きだ。
「何か焦げてないか?」
「あーっと、気のせいだね!」
リビングのソファーに座り、本を読んでいると鼻の奥を突くような香ばしい匂いが漂ってきて、いよいよやらかしたかと思った。手伝いに行ってやろうと、声をかけたが断固拒否された。
「今日はサスケくんの誕生日なんだから、サスケくんの手伝いは無しなの!」
「そうかよ。」
まぁこの際、どんな物が出来上がってきても全て平らげるつもりだ。オレの誕生日の為になまえが作ってくれるんだ。
再び読書を再開する。そうしているうちにもキッチンからは謎めいた音が聞こえてきて不安になったが、きっと大丈夫…だろう。しばらくして、エプロン姿のなまえがキッチンから出てきた。
「よぉし、出来たよサスケくん!ちょっと目、閉じててね?」
なまえに言われた通り、目を閉じた。こういう時こそ見たくなるのが人の性ではあるがじっと我慢する。
あまり待たないうちに、いいよと声がかかる。
そして目の前に繰り広げられた光景に思わず息を飲んだ。
「なまえ、お、お前これ全部作ったのか?」
「もっちろん!」
得意げな表情のなまえの顔とテーブルを交互に見る。これは驚いた。そこにはトマトを使った創作料理の数々が並んでいて、それぞれから漂う香りからしても絶対美味しいと確信できるようなものばかり。
「サスケくんがトマト好きだから、トマトを使ったお料理たくさん勉強したんだよ。あ、全部食べちゃっていい………んむッ!!」
なまえの言葉は途中だったが、ぎゅっとなまえを腕の中に引っ張り込んで、抱き締めながらキスをした。何を思ったか、今すぐそうしたかった。ああこのままじゃ料理より先になまえを食ってしまいそうだ。
なまえの料理の腕が上がった事も嬉しいし、オレの為だけに作ってくれたのも嬉しい。そして一生懸命ななまえの姿が可愛くて可愛くて仕方ない。
「も、サスケくん、早く食べてよ…。」
「ああ分かってる。今すぐ食ってやるよ。」
「な、違う!あたしじゃなくて、ご飯!」
冗談のつもりでなまえを抱き上げて寝室へ向かおうとすると、じたばたと真っ赤な顔をしながらオレの腕の中で暴れた。
「クククッ、今のは冗談だぜ?…でもまぁ食い終わったら覚悟しとけ。」
「なっ、サスケくんのバカ!」
「ふっ。それじゃあいただきます。」
顔をトマトみてーに真っ赤にしているなまえは、料理を口に運ぶオレの顔を真剣な面持ちで見ていた。
「旨い。」
「わぁっ、やった!」
その時のなまえの嬉しいそうな満面の笑顔はこれから先ずっと忘れないだろう。
奪うようにキスしてあとがき
今日がサスケくんのお誕生日!ってことで企画の中でもお誕生日の雰囲気のある話を書いてみました。
おめでとー、サスケくん!