※グロ注意
なまえが良いって言った。だからもらった。アハハ、嬉しくて自然と口の端が上がってくる。こんな気分は久々だ。ボクは血にまみれた右手にあるまんまるいソレにキスをした。大好きななまえの甘い甘い血の味がする。おいしいなあ。こういうもの本当は、ボクのイトコが好きでたくさん集めてるけど、なまえのはあげたくない。絶対に。せっかくボクに、と言ってもらったんだから、誰にもあげない。
ソレをなまえからくり貫いた時の、彼女の顔が忘れられない。笑ってた。嬉しそうに。ボクもなまえの大事なものを貰うことができて嬉しかった。
無限の鍵を使い、兄上の屋敷に戻ると、ちょうど兄上に出くわした。
「アマイモン!」
呼び止められたので、素直に立ち止まる。その際に、今まで右手で大事に持っていたものを、ジャケットのポケットにそっと入れた。兄上は、いつになく険しい表情をしていた。ボクは何か怒られるようなことでもしただろうか。この前、兄上の遊園地で地ならしした時もものすごく説教されたっけなあ。
「なまえの左目は、どうした?」
これは参った。兄上には全てお見通しという訳か。怖い怖い。いつどこで知ったのだろう。なまえが自分から言った、というのはあり得ない。
「なまえが良いっていいました。嬉しいよって、笑ってました。」
「お前というやつは…!」
「今度は心臓くれるって約束してくれたんです。それでは。」
これ以上ここにいるとめんどくさい事になり兼ねないので、早々に脱出することにする。しばらく虚無界に戻ろうか。そうすれば、生まれ故郷を捨てた兄上だから、追ってはこないだろう。ああ、イトコにはおみやげ持って帰ると言ってしまったけれど、今回はナシということにしよう。
笑ってたんですから、幸せだったんじゃないですか