「嫌いだよ、アマイモンなんて…。」

そうですか。ボクはなまえが好きです。初めて目にした時からずっと変わらずに。じゃあどこが好きか?アハハ愚問ですね。ボクはなまえの涙が大好きだと前から言っているのになあ。悲しみや苦しみに歪む顔が大好きです。だから毎日どうしたらキミを泣かせることができるか考えます。心なんてちくりとも痛みません。ボクが好きなものを好きなように遊んでいるのですから。むしろ楽しくて楽しくて。
ある日なまえに愛してると言ったらとても嬉しそうにしていました。人間の恋人が言うそれを見よう見まねで演じました。なまえは良かったかもしれませんが、それではボクはつまらない。

ある日ボクはなまえの友人の女を連れ去りました。奥村燐と戦う理由を作るためとはいえ、なかなか良い案だったと思います。その女をボクのお嫁さんにしようと適当な事を言って、ついでにその唇を噛み千切ってやろうとした時、こちらへ飛びかかってくる奥村燐の後ろになまえの姿が見えました。なまえの顔はボクの思った通り、泣きそうになっていました。恐らくは嫉妬という感情がなまえの中にあったのでしょう。嫉妬がどんな感情であるかは辞書で調べました。そしてそれをなまえにさせたら、ボクの大好きななまえの涙が見れると思いました。



「なまえ、大好きです。」

「…違うね。アマイモンは本当はしえみちゃんが、好きなんだ。」

「ウーン、どうでしょうか。」

わざとらしく、迷うような言動。実際そんなことは無い。ボクが好きなのはなまえだけですからね。あの時のなまえは目の前に起きていた事しか信じられなかったようでした。

「私はもうアマイモンの事は好きじゃない。こんな辛い思いをして、泣きたくないもの。」

ハァ、それは残念だなあ。もうボクの為に泣いてくれないなんて。さすがのボクでも、今のは結構傷つきました。このままではなまえがボクから離れて行ってしまうかもしれないので、捕まえて逃げられないようにしましょうか。そうすればいつだってなまえの事を独り占めできますね。ボクの好きなものもいつだって見られます。

「さあなまえ、おいで。」

嫌がるなまえを引き寄せて抱き締めました。ボクの手から必死に逃れようとしているなまえがすごく非力で、それでいて愛くるしくて壊したくなりました。もっと泣けばいいのに。もっと涙が出ればいいのに。ボクの大好きななまえをもっと見せてください。なまえの目がボクに向けられていなくともなまえがボクの側にあればいい。
もう離しません。歪んで壊れていくなまえの心を砕くのはボクしかいない。





あとがき

クールなヒロインの泣き顔にどうしようもなく萌えるアマイモンという設定。もういい加減しえみちゃんの百合夢が書きたい!