恋愛感情といったものはとうの昔に切り捨てたつもりであった。くだらない。もっと世界は愉しいことで満ち溢れているのだ。そして私は、この正十字を背負う者。恋をしている暇などありはしないのだ。
「メフィスト。」
そして、本来人間どもを惑わす立場にあるこの私がたった一人の女性にこんなにも振り回され、惑わされることなどあってはならないというのに。
「いい加減にしてくれませんかねぇ。邪魔ですよ、なまえ。」
大画面に広がる一対一の戦闘風景の時間を一度止めてから、首に回された手を払い退けた。しかしその意味はまるで無く、再び首に鬱陶しいほどに巻き付いてくる。これではせっかくのお楽しみが満喫できない。コイツはアマイモンとこういうところが本当によく似ている。人がせっかくの余暇を楽しもうとしていると現れ、一悶着。台無しになる。
「ねぇメフィスト、遊んでって。」
鬱陶しいことこの上ないが、こんな事で負けてはいられないと画面に意識を戻した。しかし、耳元で私の名前を吐息まじりに呼ぶものだから、思考が一瞬停止してしまい、その間に画面に映し出された体力ゲージがフルから一気に半分までに減少してしまった。
「なまえ、どうしてくれるのですか?」
「どうもしない。メフィスト、ゲームばっかしてないであたしと遊んで。今日も気持ち良くしてあげる。」
「今日"も"だなんて滅相もないですね。私は貴女に気持ち良くしてもらいたなど思っていませんし、私は貴女と遊ぶ暇などありません。」
「いいから。」
「………な、っ!」
そう言ってなまえは私の首筋に舌を這わす。何とも言い難い心境になった私は、生意気な口を塞ぐためにその顎を掬った。そして特注コントローラーを手放すと、なまえの肩を掴み押し倒す。
「少々おいたが過ぎるようですから、貴女には一度教え込まねばなりませんね。おっとその前に言っておきますが、私は貴女が嫌いですからね。」
「そう?あたし知ってるよ。メフィストは動揺なんて滅多にしないけど、した時は、本当の事と反対の事を言うから。」
「知りません。そんなの。」
私に押し倒されてもなお嬉しそうに笑うなまえにむしゃくしゃする。
―――――
「はぁ、あッ………んんんっ!」
全くこんなに私の下で乱れておいて、よくもまぁ気持ち良くしてあげるなどと言えたものだ。そうか、そんなにイイのか。はあ、鬱陶しいはずのなまえのこんな姿を見て一瞬でも欲情するだなんて一生の恥だ。
「私を気持ち良くするなどと大口を叩いた結果がコレですか?」
「っや、あ……だって、メ、フィ、ストがぁあッ!」
奥に届くぐらいにまで深く、中を抉るように突いてやるとなまえは私の半分はだけた浴衣の袖をぎゅっと握りしめていた。そしてその身体は小刻みに痙攣している。もう達してしまっただなんてちっとも面白くない。でももう少し付き合ってやってもいいだろう。私の時間を無駄にした罰と称し、もっと楽しませてもらおうではないか。
「メフィスト、好き。」
「はぁ。ご勝手にどうぞ。」
「メフィストもあたしの事が好きだよね?」
「………さっき嫌いだ、と言いましたが?」
「ふふ、じゃあ好きなんだよね。」
なまえにはついて行けない。基よりついて行こうともしていなかったが、まぁこんな余暇もいいかもしれないと心のどこかで思ってしまった。
私を暴くおまえが憎いあとがき
ツンデレが8:2ぐらいのメフィストさん。押せ押せヒロインちゃんですね。