サソリは一流の傀儡師。彼の類いまれなる技術の高さにおいて、右に出るものはいない。
「やっぱこう…ある程度の大きさが必要になってくるんだよな。その方が扱いやすい。」
今日も自室に引きこもり、新しい毒の調合や傀儡の開発に明け暮れて…いるはずだった。
部屋のそこら中に傀儡の手足、頭、仕込みのパーツが散らばっている。
気がついたらブツブツと呪文のように独り言を呟いていた。…ったくこれじゃあまたアイツに気持ち悪がらられちまう。ていうか、無意識のうちに独り言とか相当キてるな。ああこういう事だから、見た目は子どもでも脳は35歳なんだ畜生。そんな事を思っていると、扉の向こうから声が聞こえた。
「サソリ、入るよー!」
おいおいいきなり現れノックも無しか。今時の小娘はこんなんだから、オレみたいな奴が恋人なんだぜ。…あれ、何言ってっか分からなくなった。まぁいい。
「なまえ、何しに来たんだ。」
「サソリのお仕事見学に加え、サソリとイチャイチャしようと…、」
「何だお前。」
邪魔しに来ただけだろ、そう言いたかったが喉辺りで留めておいてやる。
しかも真っ昼間から、イチャイチャだなんだと過激な事を言いやがる。これだから今時の小娘は。
しかしオレも実は満更でもなかったりする。…が、ここで乗ってしまったら何だかカッコ悪くて情けない気がする。
ここは冷静に、クールに。そういやデイダラもクールがなんたらかんたらとうぜェ事を言っていたな。くそ、アイツなまえと年齢が近いからって、調子こいてなまえに何につけて絡みやがって。今度アイツと目が合ったら、絶対に毒づけにしてやら。
「……………。」
「サソリー?」
なまえが来ているにも関わらず、今関係の無い事を悶々と考えて、黙り込んでいる姿はなまえからしたら、酷く滑稽だったのだろう。
ニヤニヤしながらオレの顔を覗き込んできた。バチリと目が合うとオレは我に返った。
「何だよ。」
「いいや、サソリがおかしくて、目がどっかいってて変で、それに変態だよなって思ってさ。」
「何一つとしてオレを褒めてねェな。仕事見に来といて愚痴ばっかりたァどういう事だ。」
「いいじゃん事実だし。……ん、なにこれ?」
「あ、お前…!」
なまえの視線を追って、とある物にたどり着いた。その瞬間冷や汗。恋人に見つかったらヤバいもの。エロ本とかじゃない。そういうのはもっと違う場所に隠してある。
まぁそれはオレらしいっちゃオレらしい。
「うわ何これ。」
なまえがオレの後ろにあった一体の傀儡に目が釘付けになっている。
オレとした事が、さっきなまえが入って来た時に巻物にでもさっさと隠せば良かった。いや、なまえが悪い。ノックもせずに入ってきたから。
その傀儡はオレが念入りに何日も何ヵ月もかけて手掛けているものだった。細部まで細工をこだわっている自信作に成りうる傀儡。それの見た目は女。しかもオレの一番身近な……早い話なまえを象った傀儡。
「うわー細かいねぇ。おっぱいの大きさとかおんなじなんじゃないの、これ。良く見てるねサソリの変態。」
「うるせェ。」
小娘が平気でおっぱいとか言うんじゃねェよ。ったく、何でお前はそうなんだ。それに変態じゃねェ、多分。
「なんであたしの傀儡なんて作ってんの?あ、もしかしてサソリのお父さんとお母さんの傀儡みたいに、自分自身をぎゅーってするため?んー、なんなら生の方がいいじゃないの?」
うぜェこいつ。一人で勝手に話進めやがって。
なまえの傀儡はそういう用途じゃない。一応戦闘に作ってはある。
なまえの恋人のオレが言うのもなんだが、コイツはなかなかイイ身体をしてやがる。胸とか腰の括れとか、尻とか…。傀儡造形師のオレとしてはそういったなまえの身体の部分一つ一つが非常に魅惑的であった。だから、ぜひとも自分でも作り出してみたいと思っての事だった。しかしここが傀儡師として、なのか男として、なのかと聞かれれば何も言えなくなる。まぁそこは致し方ない、のか。
「見つかっちまったら仕方ない。なまえ、お前に今後のより良い傀儡造りの為の手助けをしてもらうぜ。」
ヘラヘラ笑っていたなまえの表情が一変して引きつっていた。迫るオレに対し腕を前に構えて抵抗をみせる。
「手助けって、何をっ?」
「仕事見に来たんだろ?折角だから、見るだけじゃなく協力しろ、なァ。」
次の瞬間、なまえを押し倒し、服を捲し上げた。そして露になった、こいつの胸に舌を這わせる。小さくなった抵抗。徐々に漏れ出すなまえの甘い喘ぎを遠くに聞きながら思った。
やっぱり本物に限る、と。
オレは傀儡師の前に男だったって訳だ。
人類の造形美に思いをはせていたところですあとがき
第4弾はサソリでした。なんだかんだでサソリさん夢を書いたのは久しぶりな気がする。連載ではちょくちょく登場していらっさるが。