ふふ、待っていてくださいね、ショコラッテ。
一口で貴女を私の虜にしてみせますから。



好きな人にチョコレートと共に思いを伝える。素敵なイベントじゃあないですか。
私も今年は愛しいあの子のために作りましょう。

「ジャーファルさん、本当にいいんですね。」

「ええ、お願いします。ヤムライハ。」

ショコラッテに振り向いてもらえるように、魔法のチョコレートを作っている最中です。

「そ、それではジャーファルさんの血を数滴ここへ入れてもらえますか?」

私の愛の詰まったチョコレートが今まさに完成しようとしています。
ああ、ショコラッテに早く召し上がっていただきたいですね。

「できました。ショコラッテは必ず貴方のことを好きになります。異常なまでに。・・・一応魔法の解除方法を・・・、」

「そのようなものは必要ありません。ありがとうございました、ヤムライハ。今度東国の方の貴重な魔導書をさしあげますね。ええ、もう感謝してもしきれないくらいです。」

完成したチョコレートをショコラッテの好きそうな可愛らしい箱に入れて、彼女の元へ向かうことにしましょう。
さあ、愛しいショコラッテはどんな顔をするのでしょうね。







ジャーファルさんがおかしいのは今に始まったことじゃないの。ショコラッテのこととなると異常なくらい執着というかストーカーじみてるっていうかね、この人普通じゃないって思ったわ。いつもショコラッテのことは見ているだけで、話しかけたりとかそんなことしてるのなんて見たことがないの。ショコラッテはジャーファルさんの部下でね、実は王様のことを好・・・いいえ、なんでもないわ。とにかく、今日のジャーファルさんからのお願いには驚いたの。だって、ショコラッテに私を好きになるように魔法をかけてくれって言うんだもの。できないことはなかったけど、人の気持ちを魔法で操るだなんてそんな非道なことしたくなかった。ショコラッテにはショコラッテの恋があったはずはのに。でもね、断れなかった。ジャーファルさん、目が怖かったの。やらなきゃだめだ、って思ってしまったの。魔法を使わずとも、もっといい他の方法がいっぱいあったはずなのに。ああ、今頃ショコラッテはどうなってしまっているのかしら。
ごめんなさい、ショコラッテ。本当にごめんなさい。






ショコラッテと初めて面と向かってお話をするので少し緊張しますね。
ああ、いました。今日もとても愛らしいお姿で。
思い切って声をかけました。驚くのも無理もないでしょうね。政務官直々に呼び出されるのですから。
何か良くないことをしてしまったのだろうか、ショコラッテが今考えているのはそんなところでしょう。不安そうな表情も可愛らしいですよ。さて、本題に入りましょうか。
チョコレートを差し出すとショコラッテは、とても驚いていました。本当に私にくださるのですか、と申し訳なさそうに小さくなりながら何度も何度も私に聞いてきました。そんなショコラッテに対し私も何度でも頷いて見せます。
そうして私はショコラッテに今まで温めてきた思いを告げます。

「ショコラッテ、私はあなたが好きです。」

その瞬間ショコラッテははっとして、さらに申し訳なさそうな表情で、返事をなかなかくださりません。いいえ、貴女からの返事はわかっているのです。しばらく間があって、紡がれかけたショコラッテの言葉を遮り、彼女にいよいよ魔法をかけることにしましょう。

「いいんですよ。それよりもチョコレートを食べてみてください。`貴女のために`一生懸命作ったのですから。」

ショコラッテがチョコレートを口にしてくれました。私の血を混ぜた、魔法のチョコレート。あのヤムライハが精製してくれたのですから効き目は抜群でしょう。途端、ふっと力が抜けたようにその場に倒れ込みそうになるところを私が抱きかかえました。熱にうなされたように頬を赤らめて私の腕の中にいるショコラッテを思わず抱きしめました。

「大丈夫ですか、ショコラッテ。」

早くも魔法が作用しているのでしょうか。熱を孕んだ目で私のことを見つめるショコラッテ。

「じゃ、ジャーファル、さん・・・わた、し・・・。」

「ええ、どうしましたか?」

「私、も、ジャーファルさんのことが、好き、です・・・。」

ああ、この時をどれほど望んだことか。これでもうショコラッテは私のものですね。ずっとずっと。さて、まずは私のお部屋に連れて行きましょうか。いつでも帰ってこられるようにきちんと案内しておかねばなりませんからね。

「ショコラッテ、これからはずっと私のそばにいて、決して離れてなりませんよ。」

「分かりました、ジャーファルさん。私ジャーファルさんだけのものですからどこへも行きません。安心してくださいね。」

虚ろな目でやんわりと微笑んだショコラッテを再度抱きしめ、その可愛らしいお口に口づけました。



ほうらね、一口でショコラッテは私の虜でしょう。