毎日が忙しい自分にとって貴重な週末。日に日に冷たくなってきた風が頬を掠めて、微かに痛い。
昼頃にナマエからメールが来た。内容はいつもの下らないものと何ら変わりない。それなのに返信してやろうかどうか迷うオレは何だ。
"サスケくん、今日ポッキーの日だからポッキー買って家に来てくださいね"
返信してやると、こんなのが返ってきた。何で敬語なのかは謎。つうか普通お前が持ってくるもんじゃないのか、こういうのは。まぁこういう図々しいと言うか遠慮が無いというか、それが可哀想にもナマエだと普段から思っているオレは深く考えもしない。
当然嫌だと断ると付き合いが悪いと怒られた。返ってきた文章を最後まで読んでみると、黙っていられなかった。
"馬鹿サスケが来てくれないなら、今日はイタチと一日いちゃついてやる!"
「……あのウスラトンカチが。」
脳裏に、策略じみた笑みを浮かべているナマエの姿過る。まず策略に兄さん使うな卑怯だ。お前の彼氏は兄さんじゃない。オレだ。
ナマエの思惑通りに、自分が動くことになってしまって、むかつく。
だがしかし、仕方なくなくコンビニで、ポッキーを買ってナマエの家に向かう。うああ何やってんだか。
「おい、オレだ。」
ナマエの住んでいるアパート、インターホンを嫌味ったらしく三、四回ほど鳴らしてやる。特に意味はない。
「はいはーい。待ってました、"ポッキー"!」
にっこりと微笑み手を差し出してくるナマエ。ここで、オレ自身を待っててくれていたなら可愛いもんだが生憎ヤツの目はオレの手中のポッキーにご執心らしい。ポッキーごときにこのオレが負けるなんてプライドがズタズタになってい…あーいやでもナマエだから仕方ないか。
ナマエが部屋に通してくれたので、いつものようにソファーに座り、占拠する。
しばらくして恐らくオレンジジュースであろう飲み物を持ってナマエがソファーで寝転ぶオレの隣辺りに座った。
そしてオレが買ってきたポッキーの袋を開けて、一本だけ取り出し、じっとそれを見つめているナマエ。何をするのか見ていると、ナマエはポッキーをオレに向けて接近してくる。しかも持ち手の方がオレの方ってのはケチなのか優しさか。くれるのか?いや違うのか?何する気だ。上半身だけ起こして、これから起こりうる事をいろいろと想定して身構えた。
「んむっ!」
「……う、おい!」
ナマエはオレの口にポッキーを突っ込んだ。それから端の方をくわえて、覚悟しろと言わんばかりのニヤリとした微笑みを浮かべている。この時のナマエの表情はついさっき脳裏に思い描いたものと全くと言っていいほど同じだった。
ナマエはそのままポッキーを食べて、どんどん短くしていきついには、鼻と鼻がくっついてしまうほどの距離にまでなった。
キスしたいなら普通にすりゃいいのに。そう思い、ナマエを抱き寄せて、そのままソファーに身体を預け、キスをする。
ポッキーの周りのチョコレートが甘い。ビターなのに甘い。甘ったるかった。その気になって、ナマエの口に舌を突っ込んで、後頭部に手を回して固定する。
「……っは、サスケくん、てば…!」
「何だ。誘ってきたのはお前だろ。」
酸素を求めオレから離れたナマエの第一声がそれ。
「ああいうのは触れるぐらいが良かったのにー。雰囲気ってあるでしょ?」
「知らね。取り敢えず、ご馳走さま。」
顔を火照らせ、オレを力無く睨んでくるナマエ。今度はオレがポッキーをくわえて、ナマエの口に突っ込んで強引にキスしてやったら、頬を叩かれた。訳分かんねェ。
||||||あとがき
ポッキーの日ということでそれっぽいネタ。1が6つってもう最初で最後、だよね…?