サスケくんと過ごすクリスマスイヴ。いつもの自分の部屋にいるというのに、何故か背筋が伸びてしまう。先ほどから動きがぎこちない私をサスケくんは何か珍しい変なものでも見るような目付きで見ている。おああきっと私今絶対変な顔になってるんだ。
「おい。」
サスケくんがそんな私に話しかけてきた。それもどこか不機嫌そうにね。って言ってもいつも不機嫌そうなんだけど…あーいやいや今はそういうことを言ってるんじゃなくてね。どうせ変な顔だとか不細工だなとか言われるんだろなあ。心に覚悟を決めてサスケくんの次の言葉を待つ。
「飯まだか?」
「………え、何?」
飯ですと?クリスマスなんだからもうちょいお上品な言葉遣いを心掛けて欲しいものですが。不細工とか何だとか言われなくてよかった、とりあえず。
「そうだね、お腹空いちゃってるもんね!」
サスケくんの為に腕によりをかけて作ったお料理。最後にはケーキもあるんだけど、サスケくんに美味しいって言ってもらえるといい。まだまだぎこちない動きを残しながら、リビングのテーブルの上に料理を並べていく。その間サスケくんにじっとその様子を見られているものだから、せっかく和らぎつつあった緊張もカムバックしてくる。
「ちょっと、」
「なあ、ナマエ。」
サスケくんなんでこんなにじろじろ見るの、って聞こうとしたら、それに重なるようにサスケくんがまた話しかけてきた。
「今度はどうしたの?」
「爪、綺麗だな。良く似合ってる。」
ふええええぇ!!なんでまたこう不意を突いてこういう心にずっきゅんくるような言葉を言えるのだろうかこの人は!ギギギ、と効果音がつきそうな振り返り方でサスケくんの方を見てみるといつもの無表情だった。無自覚か?確信犯ではなさそう。無自覚だとしたらかなり手強いなサスケくん。
そんなこともあり、クリスマスイヴの夜の時間はゆっくりと過ぎていく。サスケくんとクリスマスを過ごすというだけで、普段見慣れたはずの自分の部屋の雰囲気が変わり、どこか違うところにいるような気さえした。
「ケーキ、作ったんだけどさ。ちゃんとサスケくんの為に甘さは控えめにしたんだよ。だからね、あの、」
「言い訳は良いから早くよこせ。」
言い訳!?違うけど!アピールしてたというのに…!サスケくんの言葉に少し納得がいかなかったけれど、それがサスケくんだと思いつつケーキを皿に取り分ける。そうしてサスケくんが口へケーキを運ぶ様子を、今度は私がじっと見つめていた。それなのにサスケくんは見られて気まずそうな素振りをちっともしなかったので、何故か負けた感じがして、何故か悔しかった。
「…………。」
ケーキを無言で咀嚼するサスケくん。思わず手を膝の上で、はいているスカート握っていた。
「ど、どうなの?」
「…甘くねぇし、まあ食えなくもないな。」
褒められているのかな。それから、これは美味しいということなのだろうか。言葉をぼかすなんて狡いじゃないサスケくんたら。でも取り敢えず不評にならなくて良かったから一件落着ということで。クリスマスを境にこれからサスケくんに料理をたくさん作ってあげるようになるかもしれない。サスケくんもっと料理が上手くなりたい私の実験台になっちゃうかもしれないが、ぜひよろしくお願いしたい。
それからは、最初の方の緊張がほどけて、あれはなんだったんだろうと思えるくらいにまで落ち着いた。今晩はサスケくんは家にお泊まりね。いつもみたいにゲームとかやって過ごすのもいいけど、たまにはサスケくんといっぱい話してコミュニケーションの向上を、と目論みながら、ケーキの上のミニトマトを発見してほくほくしているサスケくんの横顔を見ていた。ん?ミニトマト…?あ、一個だけサスケくん気づくなあと思って乗っけておいたの忘れてたわ。まだまだクリスマスは始まったばかりなんだから、サスケくんとの甘い時間を楽しまなきゃ、ね。
メトロノームの深呼吸 Uあとがき
クリスマス昨日だったんだけどね!
…っサスケくんとほのぼのクリスマスでした!!