「今日も楽しかったよ、ありがとう!じゃあまたね、アマイモン。」

「そうですか…サヨウナラ。」

ボクに向かって微笑みながら手を振るキミがどこへ帰るかなんて考えたくもない。もし帰る場所が同じだったらこれ以上の幸せはないというのに。
ボクは悪魔で、キミは物質界に生きる人間。本来ならばこうして会って話すことさえできないはずのボクら。たった一時会えるだけでボクは幸せに思う。キミはボクの居場所。……でも、キミの幸せはここにはない。そうなのでしょう?

「ただいまー、燐!」

「おぅ。夕飯できてっぞ。」

「やった!今日はなに?」

「スキヤキだッ!」

「おぉーっ!」

普段のキミが何をしているか見てみたくて、こっそり後をつけた。着いたのは小さな一戸建ての家。何やら楽しげな声が中から聞こえてくる。キミが、奥村燐と暮らしていることは知っていた。それにどうして2人が一緒に暮らしているかも知っていた。それはボクが到底間に入ることのできないものだった。キミが奥村燐に向ける眼差しは、ボクには未だかつて向けられたことのないもの。

「アマイモンがね、この前日本一怖いって言われてるジェットコースターに乗ったんだって!まっ逆さまにびゅーって落ちていってすごかったって言ってたの。可愛いよね、ふふっ。」

ボクの名前がキミの口から出るなんて嬉しいなあ。相手が奥村燐ってところがあまりいい気がしないけど。

「あぁー、ったくお前またアイツと会ったのか?何度も言うけどな、アイツは上級悪魔なんだぜ!あまり関わらない方が身の為だって、言ってんだろが。」

「いいじゃない、ちょっとだけだもん。それにメフィストさんがいるから、上級悪魔だろうが安心だよ。」

「まあそれは確かにそうだけどな……。」

「っと隙あり!このお肉は私が頂いたっ!」

「あぁ!?てめっ、コラァ!」

気配を消してそっと垣間見た、幸せそうな2人。
キミの幸せはここにあるんだ。ボクじゃなくて、奥村燐がキミの居場所。何だか泣きたい気分だ。王を謳い虚無界を統べるボクにとって、自分の思い通りにならないものはおもしろくない。だからボクがキミの居場所になれないなんて、悲しいなぁ。明日からもうキミに会いに行くのはやめにしよう。キミの笑顔がボク以外のヤツなんかで色づいていくところなんてもう見ていられない。キミにはボクだけをずっと見ていてほしい。ボクだけにあの眼差しを向けてほしい。

キミは、こんなボクをどうしようもない我が儘だと言って笑うのでしょうか。






あとがき

企画サイト無条件降伏さまへ提出!
アニメは終わってしまいましたが青エク熱は冷めることを知らない夜萌です。
素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました。