「痛い痛い痛い!!…ら、んまるくんっ、痛いよ!」

「ああごめん、ナマエ。大好きだ愛してる。だから許せ。」

蘭丸くんは少し、いやかなりおかしい。
いきなり人の足をのスパイクで踏みつけて、愛してるから許せだなんて、どうかしてる。今に始まったことではない。けれど、彼の異常なまでの性癖には未だに慣れることができないでいる。
こんな女の子みたいな可愛い顔してるのに、どうして私に対してやることなすこと暴力的なんだろうか。いつか問い詰めてみたら、それも好きだからだよと言われて愕然としたことを今でも覚えている。困ったことに、私はそれを悦びに変換できる程のスペックも許容力もない。他の女の子や、神童くんとかと話す時は天使の微笑みなのに。一番最初に話した時も天使の微笑みだったのに。今では、悪魔みたいに笑う。傷つけるのが楽しいんだってから、それを愛しく思うんだってから、ごく普通(多分)の私からすれば信じられないの、ほんと。

「……っく、ら、まる…くッ……!」

「あはは。ナマエ、かーわい。」

ごめんと言った側から今度は首を両手で締め付けてくる蘭丸くん。もがく私を見る目は無邪気に輝いている。このままじゃあ死んじゃう。でもいつも気を失う、ギリギリのところで解放される。でも今日はなかなか止めてくれない。本当に、もう…ヤバいのに。

「ほらほら涎垂れてるぞ。今イチゴ味の飴舐めてるだろ?すごく甘い。」

蘭丸くんは私の苦しさを余所に、口の端から一筋流れていた私の唾液を舐めとった。その感覚に酸素が足りなくて生死の境にいるという今でもゾクリとしてしまう。

「…んう…ッはッ…ぁはぁッ…はぁッ…ごほッ、ごほッ!」

やっと解放してもらえば、噎せ返りながらも息を整えようと必死に呼吸をする。そこに追い討ちをかけるように蘭丸くんは私の背中を足で踏みつける。そのお陰で地面に額から突っ込んでしまった。

「げ、ほッ……や、めて…お願い…!」

涙でぐちゃぐちゃになっている頬に砂がへばりついた。ざらざらして、すごく痛い。口の中が血の味がした。今のでどっか切れちゃったかな。

「ナマエ、可愛いよ。すごく可愛い。」

そう言って微笑む蘭丸くん。相変わらず天使みたいだけど、悪魔だね。
泣きじゃくる私の耳元で、愛してると囁かれてもう頭の中がおかしくなりそうになる。

こんな酷いことされても、別れたいなんて思ったことは一度もない。
私だって蘭丸くんが大好きで愛してるんだから。
でも、こんな辛い思いをするのならばいっそ


あとがき

似非蘭丸くんごめんなさいでした。