もう、これで何度目だろう。 愛情の再確認? これはそんな可愛いもので済まされるわけがない。 鬼道は小さく舌打ちをして、目の前で口の端を釣り上げ楽しそうに笑う不動に目をやった。 大きな瞳を猫のように細め、誘うように自らの上唇を舐める不動。 そんな彼の白い首筋、鎖骨、いたるところに散りばめられた赤い鬱血の痕。 それは決して鬼道が付けたものではない。 そう、不動は鬼道が嫉妬する様を見たいがため、度々、行きずりの男に身を預け痕をつけさせる癖がある。 そして、まんまと策に乗せられ嫉妬に狂った鬼道は不動を手酷く痛めつけた。 不動はそうやって鬼道に手酷く痛めつけられることを何も言わず受け入れる。むしろ、そうやって痛めつけられることを嬉々として享受しているようでもあった。 不動と付き合い始めてもう十数年――、不動は数えきれないほどその行為を繰り返した。 そんな不動を捨てきれない自分を歯がゆいと思えども、鬼道は不動と別れようと考えたことは一度たりともなかった。 今だってそうだ。 不動に苛立ちこそ感じてはいるが、別れようとは少しも思わない。 むしろ、どうすれば不動が浮気をせず、自分だけを愛するか……そんなことばかりを考えている。 このまま延々といたちごっこを繰り返すなんて馬鹿げている。 二度と不動が浮気などできないように、今日こそ、徹底的に不動を痛めつけてやろう。 嫉妬という安易な言葉だけでは表現できない幾多の感情に織りなされた狂気。 鬼道は仄暗い笑みを浮かべ、ゆっくりと不動に歩み寄った。 「不動、俺はお前を愛している。お前はどうなんだ?」 赤い双眸を細め、不動の耳元で問う。 ぞくりとするほどの熱と威圧感を含んだその声に、不動は身震いをする。 「あは、鬼道クンの声たまんねぇ。俺も鬼道クンのことアイシテル」 ケラケラと笑いながらそう答えると、鬼道は不動の腕を引きベッドに押し倒した。そして、不動の形の良い耳朶を舐り、吐息交じりに囁く。 「なら、俺がこれからお前に何をしようと耐えられるな?」 鬼道のその言葉に答える意味もかねて、不動は鬼道の唇に自らのそれを重ねた。 低いダイニングテーブルに腹を預けた四つ這いの状態で不動は固定されていた。 テーブルごとぐるぐるとロープで縛られているため、不動は四つ這いから体勢を変えることはできない。 鬼道は無様な姿で固定されている不動にボールギャグを噛ませた。 これからどんな仕打ちがまっているのか、どこか楽しげな表情で鬼道の次の行動を待つ不動。 そんな不動の前に出されたのは、二つの青いバケツだった。 どちらも中には細かく粉砕されたドライアイスが入っている。 ゆらゆらと白煙をあげるバケツを目の前に置かれ、不動は小首を傾げた。 そんな不動の白い腕をとった鬼道は、非常にもドライアイスで満たされたバケツの中にそれをねじ込んだのだった。 「っぐ、ぎ」 刺すような激痛に目を剥き体を強張らせる不動。想像を絶する痛みに耐えきれず、不動は失禁していた。 穿いていたジーンズに広がる滲み。 しかし、鬼道は容赦なく不動のもう片方の腕をバケツにぶち込んだ。 「っむ、ぐ、っが」 体を固定され、抵抗できない不動は激痛に涙を溢しながらも、大した抵抗をできずにくぐもった悲鳴を上げることしかできない。 鬼道はそんな不動の姿を見て、極上の笑みを浮かべた。 「六時間したら、病院に連れて行ってやる。まぁ、そのころにはお前の両腕は壊死しているだろうがな」 脂汗を浮かべた不動の白い額を優しくなでてやりながら、鬼道は言い放つ。 「六時間も何もしないのは暇だろう? せっかくだ、可愛がってやろう」 鬼道は、小水に汚れた不動のジーンズを下着ごとずり下してやった。 露わになる白い双丘を割り開くと、ひくひくと戦慄く紅色の蕾。 無遠慮に人差し指と中指をねじ込んでやれば、あふれ出す誰のものかわからぬ白濁。 鬼道は苛立ちを感じ、些か乱暴に指を出し入れしてやった。 ぐじゅぐじゅと淫らな音をたて、鬼道の指に絡み付く直腸。 浅ましい内壁は鬼道にするのと同じように、どこの誰ともわからぬ男を飲み込み欲を搾り取ったのだろう。 汚された肉穴に自らの猛りをねじ込む気にはなれず、鬼道はチェストから玩具を取り出した。 男根を模った卑猥な玩具を、物欲しそうに口を開閉する肛門に一思いにねじ込んでやる。 その衝撃に、不動の性器から黄色い残滓がじょぼじょぼとあふれ出す。 鬼道は至極楽しげに笑いながら玩具を出し入れしてやった。 不動を弄びつつ、ときおり思い出したかのようにドライアイスを継ぎ足す鬼道。 鬼道にとってはあっという間の六時間。不動にとっては果てしなく長い六時間だった。 ベッドの上で、不動は鬼道の股間に顔を埋めていた。 鬼道の穿いているジーンズのチャックを口を使って下そうと試みる不動。 しかし、思うよう下すことができず、咎めるような視線を鬼道に送る。 その視線を受けた鬼道はゆっくりとチャックを下し、鎌首をもたげた欲を不動の眼下につきつけた。 鬼道の雄を目の当たりにした不動は喉を鳴らし嬉しそうに瞳を細める。そして、舌を伸ばし鬼道の昂りにしゃぶりついた。 脈打つ幹を丹念に舌でなぞると、嬉しそうに鈴口からあふれ出す蜜。 不動はあふれ出した蜜がもったいないと言わんばかりの勢いで、それを舐めとった。 そして、小さな口を開き、愛しげに赤黒い肉棒を飲み込んだ。 口いっぱいに鬼道の雄を咥え込んだ不動は、頭を前後させそれをじゅぽじゅぽと吸引する。 必死に口淫をする不動の姿に、鬼道は愉悦の表情を浮かべた。 そして、柔らかな不動の髪を優しく梳いてやると、不動は口に昂りを咥えたままゆっくりと鬼道を見上げる。 熱に浮かされたアイアンブルーの瞳。潤むその瞳が何を欲しているのか、鬼道にはすぐにわかった。 疼く体内を熱い肉棒で掻きまわされたい、そんな願望が如実に表れている。 不動は身を捩り、鬼道に尻を突き出した。不動の蕾にはクリアピンクの玩具がずっぽりと咥え込まれており、鈍い機械音を上げ振動していた。 鬼道は玩具の取っ手を握り、ゆっくりとそれを引き抜いてやる。 「っん、ぁ、はっぅ」 玩具を引き抜かれる感覚に甘い吐息を溢す不動。 絡み付く肉色の直腸が外気に晒される様に、鬼道は息を飲む。 満たしていたものを失った肉穴は、もの欲しそうにぽっかりと口を開けている。 鬼道は不動の肛門に自らの昂りをあてがった。そして、一思いに刺しぬいた。 「ひ、っく、っぁっぁぁア、ッン」 玩具とは違う、脈打つ熱に穿たれびくびくと体を痙攣させる不動。 涎と涙を溢し、体全体で不動は歓喜に打ち震える。 鬼道はそんな不動の細い腰を掴み、容赦なく揺さぶった。 パンッパンッと、肉のぶつかり合う音と粘膜の擦れあう淫靡な水音。 不動は白いシーツに顔を埋め、ただ揺さぶられることを享受した。 あれから、不動は浮気をすることがなくなった。 否、浮気をすることができなくなったのだった。 六時間後、不動は鬼道財閥の息がかかった病院に搬送された。 しかし、不動の両腕は鬼道の思惑通り壊死しており、切断を余儀なくされたのだった。 左右の肘から下を失った不動は、もはや鬼道の助けなしで生きることはできなかった。 必然、不動は無意識のうちに鬼道に媚びるようになっていた。 鬼道は不動の両腕を奪うことによって、自らが望んだ結果を手に入れることができたのだった。 不自由な体を捩り、鬼道の胸に頬擦りをする不動。 鬼道はそんな不動を優しく抱き寄せ、口づけを落としてやった。 END |