■ 猫の日えっち ■

※注意 年齢操作/きどふど


 年度末も近づいて、さらに忙しさを増す鬼道に休息の時間などないも同然だった。
 不動とは一緒に暮しているが、夜の営みもご無沙汰して何週間。
 それどころか、満足に顔を合わせることすらできない状態だった。
 そんな日々が続く、ある日の朝のこと。出勤前の鬼道をつかまえた不動は楽しげに笑いながらその頬にキスをくれてやった。
 そして可愛らしく小首を傾げながら「今日は何の日か鬼道クン知ってる?」などと問うたのだ。
 二月二十二日。
 どちらかの誕生日というわけでもなければ、世間が喜ぶようなイベントがあるわけでもない、ごくごく普通のありふれた平日。
 何の日なのか皆目見当のつかない鬼道はただ目を丸くして可愛い恋人を見ることしかできなかった。
 にやにやと口角を上げて人をくったような笑みを浮かべた不動は、ポンッと鬼道の肩を叩いてやる。
「ほら、仕事行かないと遅刻するぜェ?」
「なぁ、不動。今日は……」
 何の日なんだと聞く前に背中を押され玄関から出されてしまう。
「帰ってきてからのオタノシミ、な」
 そう言って極上の笑みを浮かべる不動。
 鬼道は腑に落ちないながらも、しぶしぶと出勤したのだった。
 しかし、何がオタノシミなのだろうか。
 鬼道はその日一日、そればかりを考えて仕事をしていた。
 期待ばかりが膨らんで、時間が過ぎるのがやけに遅く感じるほどだった。
 早く家に帰り、不動の言うオタノシミとやらがなんなのか確認したい。
 そう思い懸命に仕事をこなすも、結局帰りは定刻を優に過ぎた十一時半だった。
 逸る気持ちで帰路を辿る。
 そして、やっとたどり着いた我が家の扉に嬉々として手をかける。しかし、その扉が開くことはなかった。
 鬼道は愕然とした。
 家の鍵が閉まっている。
 それはつまり、不動はもう寝てしまったということだろう。
 鬼道は肩を落として、家の鍵を取り出した。
 そして、静かに中に入る。
 案の定、家の中の電気は全て消えていた。
 リビングの明かりをつけてテーブルを見ると、きれいにラップのかかった夕食が並んでいる。
 そして、癖のある文字で「仕事おつかれ。温めて食べて」と書かれたメモが置かれていた。
 鬼道は苦笑して、料理をレンジにかけた。
 そして、一人空しく夕食を済ませシャワーを浴びた。
 寝室のドアを開ければ、心地よさそうな寝息が耳に入る。
 二人で眠るキングサイズのベッドに腰を下ろすと、幸せそうに眠る不動の姿。
 そんな幸せそうな姿を見てしまえば、たたき起こす気にもなれず鬼道は小さく息をついた。
 額にかかる柔らかな髪を優しく梳いてやり、自分もベッドに入る。
 オタノシミとやらがなんなのか答えはわからないままだったが、すぐ隣に愛しい人の温かな体温がある。鬼道はそれだけで満足だった。
 目を閉じると、疲れた体にはすぐに睡魔が襲い掛かる。
 ほどなくして鬼道は、ぐっすりと深い眠りについたのだった。
 規則正しい寝息が聞こえるころ、隣で寝たふりをしていた不動がむくりと体を起こす。
 そして、鬼道に気づかれぬようベッドサイドのチェストを開き、この日のために準備したものを取り出した。

 ちりん、と涼やかな鈴の音が鼓膜を優しく揺する。
 下半身に心地よい体温を感じ、鬼道はうっすらと瞼を開く。
 ふと、布団を持ち上げ自らの股間に目をやると、嬉々として鬼道の肉棒に舌を這わす不動と目があった。
「ん、っはぁ……鬼道クン、おはよ」
 蠱惑的な笑みを浮かべ、鬼道の亀頭にキスをしながら不動は言う。
 そんな不動の姿を見て鬼道は軽い眩暈を感じた。
 すでに脈打ち、固くそそり立つ肉棒を根元まで咥え込んだ不動は、喉の奥を締めながら鬼道のものを吸引した。
 ジュポジュポと淫らな音をたて、頭を前後させる不動。
 熱い口腔内は、鬼道の昂りを容赦なく追いつめる。
 あと少しで絶頂を迎えられる。その寸前で、不動は鬼道のものから口を離し、にやりと笑った。
「っく、不動っ」
「アハッ、鬼道クン。オタノシミはこれからだぜェ」
 そう言って、掛け布団の中から出てきた不動を見て鬼道は目を疑った。
 形の良い頭に可愛らしい三角の黒い耳。首には鈴のついた革製の首輪。極めつけは、尻からのびる黒い尻尾。
 見紛うことなく、不動の姿はネコそのものだった。
「不動……それは……」
「鬼道クン、野暮なことは言いっこなしだぜェ?」
 くすくすと笑いながら鬼道の唇を指でなぞる不動。
 鬼道はたまらず、そんな不動を抱き寄せぽってりとした愛らしい唇を貪った。
 不動も満更じゃない表情を浮かべ、鬼道の舌を受け入れる。
 鬼道の熱い舌は、不動の口腔内を余すことなく掻き乱し、そして、ぬるめく不動の舌に絡み付く。
 くちゅくちゅと音をたて、絡み合う舌。
 互いの顎を伝う唾液など、気にすることなく二人は唇を貪りあった。
 舌を絡めたまま、鬼道は不動の胸の飾りを弄ぶ。
 ツンと立ち上がる淡い色のそれをいささか乱暴に捻りあげると、不動は眉を寄せ甘い声を漏らす。
「んっ、ぁ、っふ」
 ちゅぷ、と音をたて離れる唇。
 名残惜しいという互いの想いを色濃く表す透明な糸。
 目を細めた不動は、鬼道の胸板をつぅとなぞり吐息を溢す。
「は、ぁ……鬼道クン。今朝の答え教えてあげよっか?」
「あぁ」
「今日は、ネコの日なんだってさ」
 くすくすと笑いながら不動は自らの尻を撫でる。
 そして、鬼道にその尻が見えるように体の向きを変えた。
 不動の白い尻にずっぽりとねじ込まれた玩具。その玩具からのびる黒い尻尾がゆらゆらとモーターの音とともに揺れる。
 挑発的なその尻に、鬼道は思わず手を伸ばしていた。
 その双丘を割り開くように力を入れると、紅色の蕾が懸命に玩具を咥え込むさまが目に入る。
 ひくひくと戦慄く蕾は健気に玩具を締め付け離すまいとしていた。
「ひ、っく……ァん、きどぉ、くん」
 物欲しそうな声を漏らす不動。
 鬼道はたまらず、その蕾に指をねじ込んだ。
「ァッァアアッ」
 すでに玩具に満たされたそこが、鬼道の指によってさらに押し広げられる。
 ぎちぎちのそこは健気にも、きうきうと鬼道の指を締め付けた。
 熱い内壁と玩具の振動に挟まれる鬼道の指。
「あっは、っぅ、きどぉ、くん、早く、きどぉくんの挿れてくれよォ」
 目を眇め、物欲しそうに腰を揺らす不動。
 鬼道は居ても立ってもいられなくなり、玩具の入ったままのそこに自らの昂りをねじ込んだ。
「ぃ、っぐ……ひ……ぁ゛……ァア゛ア゛ア、ッ」
 すでに玩具に満たされたそこに、鬼道の質量を受け入れた不動は悲鳴に近い嬌声を上げ背を反らした。
 鬼道は愛しげにそんな背中に指を這わす。
 熱い内壁に締め付けらると同時に、玩具の振動が鬼道の昂りを苛む。
 鬼道は久方ぶりに感じる不動の体温に眩暈を感じた。
 不動の細い腰を抱きしめ、その体温をしっかりと味わう。
 愛しい人の熱に締め付けられ、鬼道は今にも昇天してしまいそうだった。
「不動っ……」
 名を呼ばれ、目を細める不動。
 鬼道はそんな不動を力強く抱き締めた。
「なぁ、きどぉ、くんのミルクいっぱい、注いでちょうだい」
 腰を揺らし甘い声でねだる不動。
 鬼道はそんな不動を下から何度も突き上げ、その熱い内壁にたっぷりと白濁を注いでやった。

 空が白み始めるまで互いを貪りあった二人は疲弊した体をぴったりと合わせ抱きしめあっていた。
 不動の柔らかな髪を優しくなでつけてやると、目を細めまるで本物の猫のように鼻を鳴らす。
 そんな不動が愛しくて鬼道は、不動の白い首元に顔を埋めた。
「不動、愛してる」
 陳腐な言葉しか出てこない。
 それでも、不動は嬉しそうに笑って鬼道の背中に回す腕に力を込める。
「ん、俺も……」
 そして、聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう答えた。


END





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