鬼道クンはカッコいい。 何でもできるし、何でも持っている。 多分、手に入れられないものなどないだろう。 鬼道クンのそばにいる人間は、もちろん鬼道クンに見合った何もかもを持っている人間ばかりで、だから自分みたいな『何も持っていない』人間がそばにいていいのかいつも不安になる。 鬼道クンはきっと、何でもできて何でも持っている素敵な女性と結婚して、幸せな家庭を築いて、幸せな一生を送るんだ。 だから、こんなところで道草なんか食ってちゃいけない。 俺のことなんか早く捨てて、自分が本当に歩まなきゃいけない道をまっすぐに堂々と歩けばいい。 せめて、俺が女だったら。女という武器を持っていたら。そうしたら、ずっとずっと、鬼道クンと一緒にいられたのかな。 男の俺にはそんな武器すらない。 本当に何も、何も持っていない。鬼道クンのためにできること、鬼道クンのためになるもの、何一つない。 それなのに一丁前に嫉妬なんかするんだからどうしようもない。 鬼道クンはカッコいい。 何でもできるし、何でも持っている。 男の俺が放っておけないんだ、女ならなおさらだろ。 今日はバレンタインだ。きっと、鬼道クンはたくさんのチョコレートを貰える。 でも多分、俺に操を立てて一つも受け取らないんだ。一つも。 今までだってそうだったんだから、きっとこれからだってそう。……なんて考えられるのはあと何年くらいかな。 鬼道クンと二人で幸せに過ごすおままごとのような毎日。こんな馬鹿げた永遠なんかあるはずがない。 きっと、いつか目が覚めた鬼道クンに俺は捨てられる。捨ててくれるかな。だって、自分からこんな生ぬるい日々を手放すことなんてきっとできない。俺はあまりにも長い間、ぬるま湯につかり過ぎたんだ。 捨ててくれるかな。でも、捨てられたらどうなってしまうんだろう。嫌だな。でも、自分じゃあ鬼道クンに見合わない。なんでだろう。 捨てられたくないのに、捨てて欲しいなんて馬鹿げてる。 水割りの缶を一気に傾け、最後の一滴まであおる。 酒を飲みながら肌寒い玄関先で鬼道クンの帰りを待つ。 フローリングの床が冷たすぎるせいか、それとも酒のせいか、季節のせいか、なんにせよどうしようもなく悲観的なことしか考えられない。 早く、鬼道クンの顔が見たい。早く鬼道クンに抱きしめて欲しい。 小さく息をついて、俺は次の缶に手をかけた。 玄関のドアを開けると、フローリングの冷たい床に座り込み酒を飲んでいる不動と目があった。 不動は鬼道を見ると、ふにゃりと笑って両腕を伸ばした。 抱き起してほしいということなのだろう。そう受け取った鬼道は靴を脱ぎ、仕事用の鞄を隅に置いた。 そして、優しく不動を抱き起してやる。 不動は鬼道の肩に顔を擦り付けて目を細めた。 「鬼道クンの体、冷たい」 そう言って、背中に回す腕に力を込める不動。 鬼道はそんな不動の柔らかい髪を優しく梳いてやった。 「飲みすぎだぞ」 床に散らばる空き缶の数を目で数え、鬼道はそう言った。 水割りの缶が少なくとも五本はある。 不動の息はもちろん酒臭いし、本人もだいぶ酔いが回っているようで抱き起したもののその足はおぼつかない。 「だって、鬼道クンが遅いのが悪いんだぜ?」 不動は若干潤んだ瞳で、鬼道の双眸を見つめる。 「今日は遅くなると言っただろう」 「だから、こうしてわざわざ待っててやったんだろ」 「ずっとここで待ってたのか」 「ハッ、教えてやんねー」 ケラケラと笑って不動はふらふらとリビングへ歩き出す。 鬼道はそんな不動の足取りが心配になり急いで後を追った。 リビングに入ると、甘ったるい匂いが部屋を満たしていた。 テーブルの上には綺麗にカットされたフルーツが皿の上に飾られている。そして、真ん中を陣取っているのは小さなフォンデュ用の鍋。 可愛らしいフォンデュ台の中のキャンドルに火を灯しながら、不動は鬼道に椅子に座るように促す。 不動にせかされて、鬼道は仕方なく椅子に腰を下ろした。 いまだ背広のままの鬼道は、上着を椅子に掛けネクタイを緩める。 そんな鬼道の膝の上に向かい合うような形で腰を下ろす不動。 不動は猫のように目を細め鬼道を見下ろした。 「今日は何の日だか知らないわけないよなぁ? 鬼道クン」 「あぁ」 「まかり間違っても、あの鞄の中に他のヤツから貰ったチョコレートなんか入ってないよなぁ?」 「あぁ、当たり前だ」 「ん、合格」 そう言って不動はフォンデュフォークを取り、カットされたバナナを突き刺す。 そして、フォンデュ鍋の中でとろけるチョコレートを絡め鬼道の口元に持ってくる。 鬼道はそのまま口を開いてそれを受け入れた。 甘いチョコレートとバナナの絶妙なハーモニーが口の中を満たす。 甘美なそれに鬼道の頬が自然と緩む。不動はそんな鬼道の表情を見て満足そうに目を細めた。 そして、鬼道の口に自分の唇を重ねる。 チョコレートの味がする唇を舐めながら割り開き、中に舌をねじ込むとバナナの味がほんのりと残っている。 不動はくちゅくちゅと音を立てながら鬼道の口腔内を貪った。 互いの舌をこれ以上ないほどに絡ませ、唾液のやり取りをするうちにいつのまにかチョコレートとバナナの味は消えてしまっていた。 唇を離すと、透明な糸が名残惜しげに伝う。 不動はもう一度、バナナにチョコレートを絡めると今度はそれを自分の口に持っていった。 そして、再び鬼道に口づける。 鬼道が不動の口腔内に舌をねじ込むと、そこにはまだ形を残したバナナがあった。 チョコレートの絡まったバナナを舌で転がしながら、不動の口腔内を貪る。 互いの舌で押しつぶしたバナナが、不動の口腔内でぶちゅと潰れた。 角度を変えて、不動の唇を吸う鬼道。 鬼道はぐちゃぐちゃになったそれを吸い込み、ごくりと嚥下した。 「アハッ、美味しい? それ」 「あぁ、今まで食べたどんなバナナより美味いな」 口の端を釣り上げて鬼道は笑う。 不動は苦笑して鬼道の顎を伝う茶色い唾液を舐めとった。 「ん、チョコレート味」 そう言いながら、誘うように腰を揺らす不動。 膝の上で不動の熱を感じていた鬼道は、そのまま不動をテーブルの上に押し倒した。 そして、不動のTシャツをたくし上げ、ツンと立ち上がる小さな乳首に吸い付いた。 「ン、っぅ」 敏感なそこを舐られ、小さく息を漏らす不動。 そんな不動の反対側の乳首も指で転がしながら、見せつけるように舌で押しつぶす。 先端に噛みつくと、不動の体はびくんと震える。 鬼道は乳首から手を離し不動のジーンズを下着ごと下してやった。 外気に晒された不動の性器はすでに半勃ち状態で、いやらしい蜜が滴っている。 鬼道は何を思い立ったのか、不動の乳首から唇を離しフォンデュ鍋を手に取った。 そして、極上の笑みを浮かべその鍋を不動の乳首めがけて傾けた。 「ヒ、ぃッ、やァァァアアアアッ」 寸前まで熱されていたチョコレートが不動の乳首に降り注ぐ。 あまりの痛みに不動は、目を剥き悲鳴のような声を上げる。 しかし、鬼道は無情にももう片方の乳首に同じようにチョコレートをかけてやった。 「や、ァ……っく、きどぉ、くん」 涙の膜が張った大きな瞳で、鬼道を見上げる不動。 しかし、鬼道の手からフォンデュ鍋が離れることはなかった。 片手で乳首にかけたチョコレートを伸ばしながら、もう片方の手でフォンデュ鍋を傾ける。 熱いそれは容赦なく不動の性器に注がれた。 「イ、っぐ、や、ッァァァア゛ア゛ァァアアッ」 不動の大きな瞳から溢れる涙。はくはくと口を開閉させながら怯えた目で鬼道を見上げる。 そんな不動の表情を見て、鬼道はうっとりと目を細めた。 そして、フォンデュ台に鍋を戻し、チョコレートまみれの不動の性器に舌を這わせた。 「ふふ、さすがに甘いな」 固まり始めたそれを、あますことなく舐りながらチョコレートを絡めた指で肛門をなぞる。 頑なに口を閉ざしたそこに、とろけたチョコレートをたっぷりと塗りたくり、指をねじ込むと不動の白い内またが強張った。 「ん、ぅ、きどぉ、くん、酷くしないで」 潤んだ瞳で息も絶え絶えにそんなことを哀願されては、鬼道の理性の糸などたやすく切れてしまいそうだった。 満足に慣らしていないそこに、猛る肉棒を強引にねじ込みたい。そんな思考が脳を埋め尽くす。 鬼道は大きく息を吸い込み、自分を取り戻すことに努める。 チョコレートを塗りたくった尻穴に舌を這わせ、唾液をたっぷりと注ぎながら指をねじ込む。 一本、二本と指を増やしては不動を気遣いながら中を拡げていく。 人差し指から薬指までをねじ込みぐるりと中を掻きまわしてやると、不動の声から甘い声漏れる。 「きどぉ、くん……きどぉくんの、早くちょうだい?」 鬼道の腕に自らの手を重ね不動は言った。 鬼道はゴクリと唾をのみ、スラックスのジッパーを下げ滾るそれを不動の肉穴にあてがった。 「挿れるぞ」 「ん、だいじょうぶ、ァッ」 ぐっ、と腰を押し進めるとほんの少しだけ辛そうな喘ぎが漏れるが、大した抵抗もなく鬼道のそれはずっぽりと不動に飲み込まれてしまった。 熱い内壁が鬼道の肉棒を離すまいときうきうと吸い付いてくる。 それに気を良くした鬼道は、不動の細い腰を掴み揺さぶった。 ぱんぱんと肉がぶつかり合う音が室内に響く。 結合部は溶けてしまいそうなほどに熱かった。 鬼道の昂りは、容赦なく不動の最奥を抉る。 いいところを嬲られるたびに不動は喉を逸らし、甘い声を漏らした。 「ん、ァッ、ひ、っぅ、や、ぁぁぁんっ」 ジュポジュポといやらしい音を立てながら出入りする赤黒い昂り。 不動の乳首に垂らされたチョコレートを舐めとってやると、ぎゅっと直腸が締る。 鬼道は不動の乳首を舐りながらピストンのスピードを上げた。 そして、ぎりぎりまで引き抜き一際大きくグラインドし最奥を突き上げ欲を放った。 腹の奥にたっぷりと注がれる白濁に、恍惚とした表情を浮かべる不動。 鬼道はそんな不動を抱きしめて、頬に口づけを落とす。 「お前は一生俺のものだ」 口の端を釣り上げて得意げに笑う鬼道。 中学校のころと変わらない、自信たっぷりの表情を見て不動は小さく笑った。 大人になるたびに増えるしがらみに、つい弱気になってしまう気持ち。 鬼道のその一言とその表情で一瞬のうちにそれら全てが払拭されてしまうのだから、自分も随分と単純なものだと不動は思う。 それでも、今の不動にはその一言で十分だった。 鬼道の首に腕を回しぎゅ、と力を込める。 「ずっと、鬼道クンのものでいさせて?」 聞こえるか聞こえないかわからないほど小さな声で不動は呟く。 頬を濡らす水が汗なのかなんなのか、不動は気づかないふりをした。 END -----*-----*-----*----- 狂介様、リクエストありがとうございました! 熱々チョコレートプレイの甘々きどふど、大人仕立てのつもりで頑張ってみたのですがいかがでしょうか? ドキドキ もっとでろでろに甘い内容にしようかとも考えたのですが、大人な二人ということで若干ビター仕立てにしてみました。 鬼→→→←不ということだったのですが、書いてるうちに不動が鬼道のこと大好きみたいな内容になってしまい、なんとお詫びを申し上げたらよいものか。(泡) お気に召さないようでしたら何度でも書き直しいたしますので、お気軽にお申し付けください! そして、嬉しいお言葉の数々、ありがとうございます! 日参して頂いてるなんて、嬉しさのあまりメールを読みながら小躍りしてしまいました^^ 本当にありがとうございます。 拙いエロ小説しかないサイトですが、ムラムラしていただけると本望です♪ そして、文末に思わず感涙。お気持ちだけでも、本当にありがたいです!! 狂介様の優しさに涙してしまいました。 今後も誠心誠意更新していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします! そしてそして、、、 間違っていたら大変申し訳ないのですが…… もしかして、愛撫、愛撫、アイラブ! の露出狂介様でいらっしゃいますか? さよなら、僕のジークムント のときから拝見させていただいておりました! イラスト大好きです!! はぁはぁしてしまいます!! 更新とっても楽しみにしております〜^^ 今後もサイト運営頑張ってくださいませ!! 応援しております♪ (あの、間違ってたら本当にすいません/泡) |