「不動、ロールケーキを作ったんだが、食べてくれないか?」 へらりと笑って、赤い生地のロールケーキを不動の前に差し出す源田。 忌々しい赤が、何を意味するのかなど一目瞭然だった。 「ぜってぇ、食わねぇ」 「美味しいぞ?」 源田は首を傾げ、フォークですくいあげたそれを不動の口元に運ぶ。 しかし、不動はそっけなく顔をそらし口をつぐんだ。 「不動のために作ったんだ。ロールケーキも不動に食べて欲しがってるぞ」 懸命に説得を続ける源田だが、不動は聞く耳を持とうとしない。 ここ数日、そんなやり取りが源田と不動の間で繰り広げられていた。 もちろん、メニューは毎日違うものだった。 ある時はゼリー、またある時はクッキー、それ以外にもパウンドケーキやシャーベットとレパトリーに富んでいたが、いずれもリコピンをふんだんに含んだ禍々しい赤だった。 結局、源田が愛情を込めて作ったトマトのお菓子は一度たりとも不動の口に入ることはなかったが、源田は甲斐甲斐しくも毎日お菓子を作ってくるのだった。 さて、そんな源田の不動に向ける母親のような愛情を快く思わない人間がいた。 不動の恋人である、鬼道だ。 恋人である自分以上に甲斐甲斐しく不動の世話を焼く源田。不動もまんざらではない様子で、自分には甘えないくせに源田には甘えてみせたりする。 かといって、鬼道が不動の世話を焼けるかと言ったら、それは無理な話だった。 きっと不動のことだから「鬼道クン、キモイ」とか「頭でもぶつけたのか」とまともに取り合ってくれないだろう。 それ以前に、春奈の世話を焼くならまだしも不動の世話を焼くなんて自分のキャラじゃない。 ぐるぐると葛藤するうちに、無性に腹立たしくなった鬼道はその日の放課後、スーパーにてプチトマトのパックを購入し自宅に不動を招いたのだった。 鬼道の部屋に入るなり、我が物顔で鬼道のベッドに寝転がる不動。 ぱたぱたと足をバタつかせながら、鬼道を見上げた。 「なぁなぁ鬼道クン、さっきスーパーで何買ったの?」 「貴様には関係ないだろう。それより、最近ずいぶん源田と仲が良いみたいだな」 「ハッ、そんなんじゃねぇよ。つか、何? 嫉妬? 鬼道ちゃん、かわいー」 ケラケラと笑いながら茶化す不動。 鬼道の胸中に燻る青い炎に気づいていない不動は、自ら泥中に足を踏み入れていることを知る由もない。 鬼道はベッドの上に仰向けで寝転がる不動に跨り、ゆっくりとベルトを抜く。 「アハ、もぉすんの? 鬼道クン、せっかちだなぁ」 挑発的な目で鬼道を見上げるが鬼道は表情一つ変えず、不動の両手首をベルトで一まとめにした。 そして、そのままベルトをベッドヘッドに括り付ける。 そこまでされてやっと、鬼道の様子がいつもと違うことに不動は気づく。 「なぁ、何、これ? いつもと違う趣向ってやつ?」 「そうだな、今日は俺も源田のように貴様を可愛がってやろうと思ってな」 にやりと口の端を釣り上げて鬼道は笑う。 不穏な空気を感じた不動は、身を捩るが腕を拘束されていては大した動きにはならなかった。 「プチトマト嫌いを克服させてやろう」 いかにも悪役臭い笑いを浮かべ、鬼道は先ほどスーパーで購入したプチトマトのパックを不動の前に突き出した。 そして、パックの中から一粒プチトマトを取り出して、不動の薄い唇に押し付ける。 「口を開け」 鬼道は短く言い放つ。 しかし、不動はかたくなに唇を結ぶ。 眉を寄せ、責めるように鬼道を睨みつけるが、何の効果もない。それどころか、鬼道の嗜虐性を煽るだけだった。 「どうしても食べないつもりか。なら、こちらから食べさせてやるまでだ」 そう言って、不動のズボンを下着ごと剥ぎ取る。 そして、露わになった白い尻を乱暴に掴み、窄まった蕾に無理やりプチトマトを押し付けた。 「ちょ、何考えてんだよ、鬼道クンっ」 「何って、貴様がプチトマトを食べないというから、俺が手ずから食べさせてやっているのだろう」 至極、楽しそうな表情で鬼道は言う。 「ふざけんなっ」 「ふざけてなどいないぞ?」 ぐっ、とプチトマトを押し込もうとするが濡らしてもいないそこが異物を飲み込むはずもなく、ぶちゅっと嫌な音を立ててプチトマトは弾けてしまった。 内またを濡らす冷たくドロリとした感触に不動は眉を寄せる。 鬼道は、潰れたプチトマトの汁をぬちゃぬちゃと不動の肛門に塗りたくった。 「ふっ、下の口も随分頑なだな」 「うっせ、この変態っ」 つぷっ、と鬼道の人差し指が蕾を押し開き中に侵入する。 「や、ぁっ……やめッ」 不動は体を捩ろうともがくが、大した抵抗にはならなかった。 鬼道の指が、不動の熱い内壁にプチトマトの汁を塗り込むように擦りあげる。 続けざまに中指と薬指をねじ込んでやると、不動はぎゅっと目を閉じ唇を噛みしめた。 「こっちの口はようやく、プチトマトを食べる気になったみたいだな」 三本の指をバラバラと動かすと不動の内またがひくひくと震える。 「きど、くん……やだぁ」 泣きそうな目で不動は訴えるが、鬼道は聞く耳を持とうとしない。 パックからもう一粒プチトマトを取り出すと、ためらうことなく不動の蕾へねじ込んだ。 赤い粒はひくつく肉穴にゆっくりとめり込んでいく。 くぷっ、と音を立ててプチトマトは跡形もなく不動の体内へ飲み込まれてしまった。 「なんだ、食べれるじゃないか」 くつくつと笑いながらそう言ってやると、信じられないという表情で不動は目を見開いた。 「まだまだ、食べれるよな? こんなにあるんだから遠慮はいらないぞ」 パックの中のプチトマトを摘み上げ、鬼道は言い放つ。 不動は力なく首を横に振るが、鬼道が止めてくれるはずがないということをわかっていた。 一粒、二粒とプチトマトはどんどん不動の中へ押し込まれていく。 小さな窄まりは不動の意思とは裏腹に次から次へと赤い粒を飲み込んでいった。 そうこうしているうちに、パックの中にあったプチトマトは全て不動の腹に収まってしまった。 不動が呼吸するたびに尻穴から赤い球体が見え隠れする様がなんとも淫猥で鬼道はごくりと息をのんだ。 「ぁ、っく……ぅ」 大きな瞳いっぱいに涙をため、苦しそうに肩で息をする不動。 鬼道はズボンのジッパーを下げ、いきり立つ肉棒をプチトマトで満たされた不動の尻穴にあてがった。 「この俺が食べやすいように、潰してやろう」 「や、きど、っくん……むりっ、や、ァァァアアアアアッぐ」 不動の答えなど聞かずに、一気に押し込まれる昂り。 すでにぎちぎちに押し広げられている直腸に、更なる質量が挿入され不動は目を剥き悲鳴を上げた。 ビクンビクンと痙攣する不動の体などお構いなしに鬼道は腰を振った。 「や、アァアアッく、ぅっん」 ぶちぶちと直腸の中で潰れるプチトマト。 薄緑の汁がぶちゅぶちゅと肛門のふちからあふれ出す。 鬼道は自分が気持ちよくなるためだけのリズムで不動を揺さぶり、不動の中へ熱を放った。 萎えたペニスを抜き出すと、白濁とトマトの汁が混ざり合った液体がこぽりと不動の閉じきらない尻穴からあふれ出す。 茫然自失状態の不動の頬に、トマト臭いペニスを擦り付けてやると、不動はきゅっと眉を寄せた。 「貴様の大好きなちんぽだ。好きなだけしゃぶればいい」 にやにやと笑いながら不動の口元へ萎えたペニスを押し付ける。 不動はおずおずと口を開き、それに舌を這わせた。 雄の味とトマトの青臭さが混じったなんとも言えない味が不動の口の中に広がる。 それでも、愛しい鬼道のペニスだと思えばなんの問題もなくしゃぶることができた。 不動は喉の奥までそれを咥え込み、丁寧に口淫して残滓をすすり取ってやった。 「っ、ぁ……ぅ、きど、くん、実は俺さ……トマトアレルギーなんだ」 苦しそうに身を捩り、不動は告げる。 「なっ……」 今更の告白に鬼道は血の気が引くのを感じた。 「トマトの汁がつくと、口とか粘膜部分つーの? そこが赤くなって痒くなるんだよ」 「不動っ」 「早く洗い流してくんないとかなりしんどいかも」 鬼道は慌てて不動の腕の拘束を解きシャワールームへ不動を連れて行った。 「不動っ、本当にすまなかった!」 ベッドの上で力なく横たわる不動にただただ平謝りを繰り返す鬼道。 不動はふてくされた表情を浮かべ、言葉を返さない。 「まさか、トマトアレルギーだとは知らなかったんだ」 鬼道は肩を落とし、捨てられた子犬のような表情で不動を見つめる。 「それに……その、近頃随分源田と仲が良さそうだったから……魔が差したというか、なんというか」 「なぁにが、源田のように俺を可愛がってくれるだぁ? 源田は俺がトマトアレルギーだって知ってるから、わざわざ、加工したお菓子作ってきてくれてるっつーのに、どっかのド鬼畜ド変態は生のプチトマトでとんでもないことしでかしてくれやがって」 やっと口を開いた不動の辛辣な言葉に鬼道は頭を垂れる。 もっともすぎて反論すらできない鬼道は口をつぐむほかなかった。 「言っておくけど、俺の恋人は優しい源田じゃなくド鬼畜ド変態な鬼道クンなんだから、変なところで変な嫉妬してんじゃねーよ、バカ」 そう言って頬を染めそっぽ向く不動。 鬼道はその言葉を聞き、ぱっと表情を綻ばせた。 「不動っ」 「うっせ、俺は怒ってるんだからな。当分は気安く名前呼ぶな、バカ」 「好きだ、不動、愛してるぞ」 そう言ってふくれっ面の頬にキスをしてやると、不動はしょうがないといった表情で小さく笑った。 END |