■ Restraint ■

※注意 年齢操作/きどふど


 大学を卒業し仕事に就いてからというもの、二人で過ごす時間はめっきりなくなってしまった。
 同じ家に住んでいるのにすれ違いになることが多く、顔を合わせることもほとんどない。
 そんな日々に耐えられなくなった鬼道は、不動に仕事を辞めるよう促がした。
 勿論、不動がそんな馬鹿げた話を受け入れられるはずもなく、鬼道に反発したがそれは何の意味もなさなかった。
 鬼道財閥の力をもってして、不動の勤める会社に圧力をかけたのか、結局不動は仕事を辞めざるをえない状態になってしまったのだった。
「ホント、ありえねーし」
 白いコーヒーカップに口をつけながら、不動はぼやく。
 テーブル越しに座っている源田は苦笑しながら、自分のコーヒーをすすった。
「愛されてるってことじゃないか」
「ま、そーいうことなんだけどねェ」
 仕事をしていない不動は時間を持て余していた。
 多忙な鬼道はほとんど家にいることはない。
 炊事、洗濯、掃除など家事を一通りこなしてしまうと他にすることがなくなってしまうのだ。
 誰かと一緒にいることに慣れてしまった今、物音一つしない家の中に一人でいるのは苦痛だった。
 それゆえ時間があいている源田や佐久間を呼び出しては、たまに喫茶店でコーヒーを飲みながら近況を語り合う。
 あれほど一人でいることが当たり前だったというのに、自分も随分変わってしまったものだとぼんやり思った。
 ひとしきり話し終えるころには、窓の外はだいぶ暗くなっていた。
 源田と別れ自宅に戻るとめずらしく鬼道が早く帰宅していたのか、玄関の鍵が開いている。
 不動が小首を傾げドアを開けると、難しい顔をした鬼道が仁王立ちで待ち構えていた。
「あれ、鬼道クン。今日は、随分早いねェ?」
 明らかに機嫌の悪そうな鬼道を茶化すようにそう言ってやると些か強引に腕を掴まれる。
「ちょ、痛いんだけど」
「不動、今までどこに行っていた」
「ハァ? なんだよ、いちいち言わなきゃなんねぇワケ?」
 居丈高な物言いにカチンときた不動は、鬼道を睨みつけながら吐き捨てる。
 鬼道はそんな不動の頬を平手で勢いよく張った。
 パチンと乾いた音が静かな玄関に響き渡る。
 一瞬、何が起きたのか不動には理解できなかった。
 ジンジンと熱くなる頬が叩かれたという事実を不動に伝える。
 大きな目をこれ以上にないほどに見開き鬼道を見やった。
「もう一度聞く。どこに行ってたんだ」
 痛む頬に手をやり、不動は眉を寄せる。
「そこの喫茶店だよ」
「誰といた」
「……」
 けしてやましい気持ちなどなかったが、責めるような物言いの鬼道に不動は口をつぐむ。
 なぜ鬼道が不機嫌になっているのか、不動にはまったくわからなかった。
「誰といたと聞いている」
 語気を荒げ、鬼道は言い放つ。
「はいはい、二回も言わなくても聞えてるっつーの。源田といたんだよ」
 源田の名前を聞いて、鬼道の眉がぴくりと動く。
 赤い目を細め、鬼道は不動の腕を引き強引に寝室に連れ込んだ。
 そして、ベッドに不動を押し倒し白い首筋に勢いよく噛み付いた。
「っく、ってぇよ、鬼道クンッ」
 加減なく噛みつかれた首筋から血が滴り、不動は痛みに眉を寄せる。
 しかし鬼道は、不動を気にするでもなく血の滴る首筋に吸い付いた。
 ねっとりと血液を舐めとり、傷口を広げるように舌で抉る。
 手はするりと不動の上着の中に入り込み、胸の飾りを捻り上げた。
 痛みに強張る不動の体。
 優しさなど微塵もない鬼道の手つきに、不動は身を捩り逃げようとする。
 しかし、鬼道はそれを許さなかった。
 膝で不動のものを押しつぶすように体重をかける鬼道。
 不動は動けなくなってしまい、苦しそうに鬼道を見上げた。
「鬼道クン、何なの、コレ」
 鬼道の意図が読み取れず、不動は問う。しかし、鬼道は答えてはくれなかった。
 不動の上着を強引にたくし上げ、露になった乳首に舌を這わせる。
「ぁっ、ちょ、やだっ」
 ツンと立ち上がった乳首に歯を立て噛り付く鬼道。
 そしてもう片方の乳首に爪を立て、遠慮なく引っ張り上げる。
 両乳首が真っ赤に腫れ上がるほど苛まれ、不動は眦に涙をためた。
 痛みしか与えてくれない、鬼道の前戯。
 それでも、不動の中心は確実に熱を持ち始めていた。
「ァ、っく……ぅ、きどぉくん」
 潤んだ双眸で鬼道を見上げる不動。
 鬼道はズボンのジッパーをゆっくりと下ろし、鎌首をもたげた己のペニスを不動の眼前に突き出した。
 それが何を意味するのか汲み取った不動は、おずおずと舌を伸ばし鬼道のペニスに這わせた。
 ちゅぷちゅぷと先端を舌で舐りながら、片手で幹を扱きもう片方の手で睾丸を揉みしだく。
 そして、脈打ち充血したそれを根元まで咥え込む。
 喉の奥で先端を締め付けてやりながら、緩急をつけて吸引する。
 頭を動かし、じゅぽじゅぽとしゃぶってやれば、鬼道のものは不動の口腔内で質量を増す。
「は、ァ……ンッ」
 ぎんぎんに反り返ったそれから口を放すと、透明な糸が名残惜しげに伝う。
 不動は鬼道に見せつけるように自分の指を舐り、片手でズボンを脱ぎ捨てる。
 そして、たっぷりと唾液を絡めた指を自分の中に埋めた。
「っく、ぅ……ァ、ッ」
 熱っぽい吐息が不動の口から漏れる。
 ぐるりと内壁を掻き混ぜながら、再び鬼道のものに舌を絡める不動。
 鬼道のものをしゃぶりながら、自分の中を拡げていく。
 たっぷりと鬼道のペニスに唾液を絡めたあと、不動は物欲しそうな顔で鬼道を見上げた。
 そして足を大きく開き、自らの蕾を左右に押しひろげる。
 唾液に濡れそぼつ肉穴は蕩けきっており、ひくひくと物欲しげに口を開閉し鬼道を誘った。
 鬼道は誘われるがまま、その蕾に高ぶりを押し付けた。
「ひ、ァ……っくぅ、ンッ」
 ずちゅ、と濡れた音が鳴る。
 押しひろげられた肉穴に、ゆっくりとめり込んでいく鬼道のペニス。
 喉をそらし、不動は挿入の衝撃に耐えた。
「不動っ……」
 熱い内壁に締め上げられ、鬼道は眉を寄せる。
 根元まで鬼道を飲み込んだ不動は、苦しそうに内股を震わせた。
 ゆっくりと開始されるピストン。
 ぐぽぐぽと音を立てながら鬼道のペニスが出入りする。
「ァ、ッァ、ひ……ァ、アアアッ、っく、ぅン」
 いきり立つ楔に前立腺を何度も抉られ、不動のペニスからぴゅくぴゅくと透明な先走りが滴る。
 目を眇め、快感に喘ぐ不動を見下ろし、鬼道は小刻みに腰を揺すった。
 擦れる内壁が粘着質な水音を漏らす。
 パンパンとぶつかり合う肉。
 重なり合った肌が熱く、そこから溶け合ってしまうような錯覚に陥る。
 蠕動する直腸はどこまでも貪欲に鬼道のものを締め上げた。
 鬼道の熱を搾り取る勢いで収斂する内壁に、鬼道はたまらず熱を吐き出した。
 最奥に注がれる欲の証。
 熱を余すことなく受け止めた不動もあとを追うように、達した。
 萎えたペニスを不動の中に入れたまま、鬼道は不動を強く抱きしめた。
「不動、すまない」
 不動は薄暗い天井を見上げ、鬼道のドレッドに指を絡めた。
「不安なんだ……お前が、いつか離れていってしまうんじゃないかと」
 力なく呟かれた言葉で、一連の行動の意味を知る不動。
「鬼道クンは頭良いのにバカだよなァ」
 不動は小さく笑って鬼道の唇にキスをしてやった。

 それから、不動はなるべく家を空けないように心がけた。
 買い物をするときは、鬼道と一緒に行くのが当たり前になった。
 不動が家を出ない限り、鬼道の機嫌がわるくなることもない。
 二人の生活は円満だった。
 しかし、しばらくして、どうしても外に出なければいけない用事が出来てしまった。鬼道が帰る前に家に戻ればいい。そう思い、不動は急いで家を出た。
 なんとか、鬼道が戻る前に帰宅できた不動は、ほっと息をついて夕食の準備を始めた。
 テーブルに美味しそうな料理が並ぶ頃、鬼道が帰宅する。
 鬼道は仕事用の鞄のほかに、黒い袋を持っていた。
「おかえり。飯、出来てるぜ」
 そう言って鬼道を迎えてやる、不動。
 しかし、鬼道は無表情のまま不動を抱きしめた。
「なんだよ、鬼道クン。そんなに俺が恋しかったわけ?」
 クスクスと笑いながら茶化してやる。
 不動の首筋に顔を埋め「あぁ」と鬼道は言う。
「まったく、鬼道クンはしょうがないなァ。ほら、早く着替えてこいよ」
 そう言って不動は鬼道の背中を押す。
 一緒に寝室に入り、鬼道から受け取った背広をハンガーにかけていると後ろから首に何かをつけられる。
 不動は小首をかしげ、鬼道を見上げた。
「どしたの、鬼道クン」
「お前にプレゼントだ」
 そう言われ、不動は首元をなぞる。
 滑らかな皮の手触り。
 不動の首には、黒い皮製の首輪が嵌められていた。
「……なに、これ」
 目を見開き、鬼道を見やる。
 鬼道は赤い目を歪に細め、口の端を吊り上げた。
「よく似合っている」
 かちゃりと首輪につけられる鎖。
 鬼道はその鎖を引き、不動をベッドに組み敷いた。
「二時から三時までの間、どこに行っていたんだ?」
「……っ、なんで」
 なんで知っているんだ、そう言いたかったが鬼道の唇に口をふさがれ、最後まで言うことは出来なかった。
 ねっとりと絡みつく鬼道の舌。
 逃げる不動の舌を絡めとり、口腔内を貪った。
 唇を離すとつぅ、と透明な糸がひく。
「まぁ、そんなことはどうでもいいか。貴様はもう、ここから出ることはないのだからな」
 不動の首元を戒める首輪をなぞり、極上の笑みを浮べる鬼道。
「不動、お前は俺だけを見ていればいい」
 黒い皮製の首輪にキスを落とし、鬼道はそう言った。
「これで、ずっと一緒にいられるな」
 細められる切れ長の双眸。
 赤い目に滲む狂気に、不動の背筋を冷たいものが走る。
 しかし、もはや不動に逃げ場など残されていなかった。


END





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