波の行く末@(音綱←立)
2011/02/23 00:52
音綱←立
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「俺さ、今日後輩に告られたんだ」
そう告げてから綱海は自分の言葉を疑った。
気がつくと口をついて出ていた言葉。
果たしてどんな答えを望み、そう口走ってしまったのか……口に出した綱海自身わかっていなかった。
携帯の先にいる音村は暫し沈黙する。
音村はもとより口数の多いタイプの人間ではないから、これくらいの間などいつものことだった。
それでも今の綱海にとってその沈黙は永劫の時のようにさえ感じられた。
そして、居ても立ってもいられなくなり違う話題をふる。
「あー、そういや、受験勉強とかどうよ? 俺なんか、全然……」
あえて陽気を振る舞う綱海。
音村はそんな綱海の姿を瞼の裏に思い浮かべ、口を開いた。
「後輩って、あのキーパーの?」
「……」
自分でふった話だというのに、綱海はこれ以上触れて欲しくなかった。
その理由が何なのか、綱海にはわからない。
わからないのに、まるで嵐の前の空を見ているような、得も言えぬ不安が綱海の胸を締め付ける。
これ以上この話題に触れたら何かが壊れてしまう。
絶対に壊したくない何かが、音をたてて壊れてしまう。
頭ではなく本能で、綱海はそれを感じとっていた。
「綱海は……その後輩のことどう思ってるの?」
いつもの音村なら、きっと綱海の気持ちを汲み取って逃がしてくれただろう。
しかし、今日の音村はそうじゃなかった。
少し低い声で探るように問われ、携帯を握る綱海の手が僅に震える。
どう思ってる?
自分が、立向居を。
綱海は目を閉じて大きく息を吸い込む。
そして、彼に告白された昼のことを思い出した。
続く〜
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