\自由に生きてる/


その翌日、及川さんからバレーしよっか、と言われはしゃぐちび飛雄。サーブ教えてください!と勢いよく言うちび飛雄にかつての(北一時代)飛雄の姿が重なる。
見せるだけね、と言って近くのスポーツセンターへ。

ちょうど体育館を使ってる人がいなく、2人でできるということでトス回しから始めることに。楽しそうにバレーをするちび飛雄を見て、あいつとは、こんなことできなかったなぁなんて思いふける及川さん。(多分ちび飛雄がバレーしましょうと言って嫌だったのは一緒にしたくないという思いも混じってたから)
体も温まってきたところで、及川さんがサーブを見せようとする。それをじっと見つめるちび飛雄。
その視線を受け止めながら放ったサーブは、しばらくバレーをやっていなかったとは思えないほど強烈なものだった。

じんじんとする手を握りしめて、どう?とちび飛雄に振り返った及川だったが、そこにちび飛雄の姿がなく、ヒュっと息を呑む。

すると後ろから及川さん、とちび飛雄の時とは違う、もっと低い、よく聞いたことのある声が聞こえて及川は固まる。
振り返る事はできなかった。でもそこにいると、直感でわかった。


「良かったッス、またあんたがバレーやってくれて。何回も何回も、しつこく言えばいいって岩泉さんに教えてもらったことあって」

そんな事、知らなかった。いつ話したんだお前ら。

「バレーやってる及川さんじゃないと、俺嫌です。じゃなきゃ見ててつまんねぇ」

つまんないってどういう事だ。及川さんはイケメンなんだぞ、目に入れても痛くないんだからな。

「あんた顔はかっこいいから、女に囲まれてニコニコして、そんでいつか可愛い人隣において、幸せになるのなんて、見てて腹立つだけだしそんなの見たくねぇし、だったらバレーしてて、ギラギラしてるいつもの及川さん見てたいって思うのは当然です」

なにそれ、勝手でしょお前。

「及川さん、俺は、いつもここにいます。及川さんがいるコートの中に、向こう側に、います」
「……...いないじゃん」
「...うぬん、じゃあ、一緒にいます」

じゃあってなんだじゃあって。

「一緒に、戦ってます。及川さんがバレーするそこに、俺はいます。ずっと、あんたを見てます」
「俺だけを?」
「はい。及川さんだけです」

ーーーーーなにそれ。

「それって、俺のこと好きなの?」

ゆっくりと振り返って告げる。そこにいたのは、小さな北川第一のジャージを着た影山ではなく、及川のよく知る影山飛雄の姿があった。

「ーーー好きですよ。これからも、ずっと好きです」

ふわり。影山飛雄らしからぬ優しい笑い方にドキリと心臓がなる。そしてその刹那ーーー目の前から、飛雄の姿がなくなった。
しん...となる体育館。先程そこにいたはずの影山の場所には、自分の放ったバレーボールが転がっているだけだった。

「...返事くらい、言わせろよバカ」

言い逃げとか、本当に勝手。
昨日散々流した水滴の残りが頬を伝う。それをジャージの袖で拭うと及川は大きく深呼吸をし、

「俺も、好きだよ飛雄」

誰もいない体育館で、そう呟いた。



その後、及川さんはバレーに復帰します。コートの中にいるという言葉を信じ、ずっと見ているという言葉を胸に秘め。

以上【 及川徹がバレーを辞めた話】という嘘乙なタイトルの話でした。この話考えたのはだいぶ前なんですが、最初漫画で描こうと思ってたんです。でも及川さんが及川さんっぽくないなぁと思ったのと時間が無いので無理かなぁと。
誰か漫画でも文でもいいからかいてくれ。←
今後もちび飛雄と及川さん描くときあるとは思いますが、こういう設定なんだよ、決してパラレル世界とか年齢操作じゃないんだよって自分なりの言い訳でした。おわり。

2016/11/15

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