\自由に生きてる/


◆おめでとう沖田
毎回毎回同じことを言ってて、誕生日でもないのに欲しいものを口にしてるというのに、飽きもせずに俺の欲しいものは何だと聞いてくるこの人にはほとほと呆れるしかない。

「俺が欲しいのは副長の座でさぁ、だから死ね土方」
「いやだから、そういうのじゃなくてだな、」

久々の2人で外回りをしながら、繰り返しのやり取りにいい加減飽きてきた。ぶつぶつと文句か何かを呟く土方をさっさと置いて、自分だけ屯所に戻ろうかと数歩足を早めた沖田が、思い出したかのようにピタリと足を止める。

「なんだったら土方さん」
「あ?」
「あんたの首じゃなくて、あんた自身でもいいですぜ」

土方の反応を楽しもうとニヤリと悪い笑みで言ったはずだが、だからなんか物とかで欲しいやつだよ。などととんちんかんな返答をする土方に今日で何度目かわからない溜息が出る。

「やっぱり死ね土方」

苛立ち混じりで言ったその言葉に土方の怒鳴り声が上がり、誕生日プレゼントが何故か犬の餌になるのは、もはや毎年のことである。

◆おめでとうスザク
「ハッピーバースディ枢木スザク」
背後からかけられた言葉に振り向くと、そこにはさほど大きくはない苺のホールケーキを持った魔女が立っていた。思わず顔を顰めれば、魔女はそう恐い顔をするなと言ってクスリと笑う。

「あいつに頼まれたんだ。これをお前に渡せとな。誕生日なんだろう」
「………そうだけど…なんでC.C.に?」
「知らん自分で聞け。馬鹿みたくせっせっと作っていたよ。お前の喜ぶ顔が見たいのならピザも作れと言ったら却下されたがな」
「…ピザをもらって喜ぶのは君だろう」

ふっと小さく笑を零せば、先程よりも深い笑みで顔を覗かれる。行かなくていいのか?と問われ、彼女が持っていたケーキを手に取り彼の元へと足を早めた。後ろからあまり無茶はさせるなよと笑った声が聞こえたが、それは聞かなかったことにする。

◆おめでとう紺
梅雨があけそうなこの時期に、大雨が降った。確か今日は沙門のおっさんに呼ばれてはいたがこの雨だと行く気が引ける。ご隠居に本を借りていたのでそれでも読んで、雨が引いたら出るかと結論づけて開けた戸を締めた。それと同時にドンドンと煩く戸が鳴る。

「……………………………よう」

誰だと開けた戸の先には、緑色の髪をした、自分より目つきの悪い男がしかめっ面で立っていた。その姿を見て、思考が止まる。なんでお前が、なんでこんな雨の中、聞きたいことは山ほどあったが、とりあえず濡れている彼を部屋に入れることが先決だ。
驚きを隠せないままに中へと誘うと、彼は首を横に振ってポツリと言葉を漏らした。

「ただ、顔見に来ただけだから、」
「なんで?」
「…………見たかったから」

直後ボンッという音を立てて彼の顔がみるみるうちに赤く染まり、じゃあなと慌ててその場から立ち去ってゆく。
大雨の音にかき消されそうな声で彼が言った言葉は自分の耳にきちんと届いており、その言葉の意味を理解して一気に体温が上がる。多分今、露草にも負けないほど顔を赤くした自分がいるのだろう。そう思うと恥ずかしく、紺はその場にしゃがみこんだ。
雨はまだ、止みそうにない。

◆おめでとう及川さん
夏休みに入るのと、その日が休みの日だからと言って誕生日は前々の日にいろんな人から祝われた。可愛い女の子やクラスのやつ、チームメイトからは部活があるため当日に祝ってもらえた。
たくさんのおめでとうとプレゼントを貰ってすごく嬉しいのに、肝心のやつからはおめでとうという言葉もない。ムカついて取り出した携帯には着信履歴も新着メールも届いておらず、思わず舌打ちをしてしまった。

「何祝ってもらってイラついてんだクソ川」
「ちが、祝ってもらえないからイラついてるの!」

あ?と顔をしかめる幼なじみに、飛雄が、とボソッと言えばそれだけでわかったのか、あぁと納得して大きな溜息を吐き出していた。

「祝って欲しいなら言えばいいんじゃねぇの影山忘れてそうだし」
「そ、うだけど!それだけは絶対嫌だ!なんか負けたみたいで悔しいじゃん!」
「じゃあーー」

と何か言いかけた岩泉の言葉が途中で切れる。岩ちゃん?と首をかしげて幼なじみを見れば、目を見開いて驚いているのがわかる。
何に驚いているのかとその目線の先を追えば、思わずあっと声が漏れた。校門のところにポツンと佇む黒が見えて、その姿に心臓が高鳴る。急いで駆け出しそいつの元へといけば、眉間に皺を寄せ凶悪な顔をして誕生日おめでとうございますと祝われた。
ムカつくけど、これがこの日で一番嬉しかったのは、事実だ。



Happy Birthday!
短くまとめるの難しい!!←

2014/07/20

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