それはまるで戯曲のような
衝突-3/4

「今日はここまで。明日からは通常授業だから覚悟しておけ!」
威圧的な、怒声にも聞こえる声が廊下に響く。

普段ならすでに帰宅しているところだが、珍しく担任に話しかけられ、
この教室の担任である諸岡先生に書類を渡してほしいととのことだった。
担任も諸岡先生が苦手らしい。

「だからといって、普段直帰してる人間に渡すかな……」
ぽつりと呟いたと同時に諸岡先生が教室から出てくる。

慌てて諸岡先生に担任からの伝言を伝え、書類を渡した。
受け取り際に諸岡先生は問う。
「ところで桜庭……お母様が書いている小説の進捗は?」
どうやら彼は母のファンのようだ。

母は、もともと無名な脚本家だったが、ある小説が切っ掛けで時の人となった。

どう返事したものか迷っていると、ハッとしたように諸岡先生が訂正する。
「あぁいや、そういう話をするのは駄目だと言われているならいいんだ」と。
最近発売された小説を読んでファンになったと、聞いてもいないのにベラベラ話す。

そもそも、母は小説を書いていない。彼女が書いているのは脚本だけ。

私が趣味で書いていたものを、彼女が無断で賞に応募したのだ。
入賞して、出版して、売れに売れてから彼女は変わってしまった。
暴露を恐れてか、私に対する目が厳しくなった。

貴方が今読んでいるのは私が書いたんです、と言ってしまいたいが、
言ってしまえばどうなるかなんてわかりきっているので、
喉に出かかった言葉を必死に飲み込み、
「そうですか。母に、伝えておきますね」
とだけ言って笑った。笑えているか微妙だけれど。
その返事に満足した諸岡先生は去っていった。

なんとか場を乗り切れたことに安堵しつつ、踵を返そうとしたところ、
「見たんだよ、昨日のマヨナカテレビ!」
聞きなれないワードが聞こえてきた。
マヨナカテレビ?
興奮した様子で話す男子生徒たちに耳を欹てる。

「俺の運命の相手、山野アナだった!」
(山野アナ……山野真由美アナウンサーか。
以前、私の小説が賞に取ったとき、彼女がアナウンスしていたっけ。)

思考を巡らせていると、校内放送が流れた。
学区内で事件が発生したという内容だった。
男子生徒たちの会話をまだ聞いていたかったが、物騒な話の後だ。さっさと帰路につこう。

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