バレーという競技はどうしようもなくエロチックだ、と思う。
 
陸上競技のように露出が多い訳ではない。半袖半ズボンで襟ぐりも狭め。サポーターを付けていれば更に露出は減ってしまう、けれど。
跳ぶ時の全身を躍動させる姿。スパイクを打った後たまに、チラリと覗く脇腹。流れる汗を拭わずサーブに構える体勢。
どれもこれもストイックな魅力に溢れている。男バレのマネージャーという立ち位置は、フェチ心の強い私としては正直最高のポジションであった。今もほら、ジャンプサーブを決めた影山君の首筋が私の目を惹き付けて話さない。
 
 
「あー、やっぱ影山君のうなじいいわー」
「おい煩悩だだ漏れだぞマネージャー」
「まぁ大変」
 
 
茶目っ気で涎を拭く動作をすると、澤村から大きな溜息。
 
 
「…垂らしてないよ?」
「知ってる」
 
 
本当に垂らしたら他の部員に引かれちゃうからね。自然な姿を見るため、基本的には”しっかりしたマネージャー”という立ち位置は死守したい(一部例外)。見ると例外その1の澤村がボールを持って待っていた。
 
「あ、それ空気入れるの?貸して」
「頼むわ」
 
 
えーと、空気入れはどこにあったっけ。ていうか他のボールは大丈夫かな、とコート内に視線を泳がせると、西谷くんとバチッと目が合った。瞬間満面の笑みで手を振ってくる西谷くん。何か犬みたいだなぁ。
 
 
「名前さん、今俺のローリングサンダー見ました!?」
「あーごめん見てないなー。あのさ、ボールの空気大丈夫?」
 
 
聞くと数度叩きつけてから「大丈夫だと思います、ありがとうございます!!」とまたいい笑顔。こっちこそいつもありがとうございますご馳走様です。西谷くんの手って薄くて骨ばってていいんだよね。
 
 
「ホントお前外面いいよな…」
「えー澤村に言われたくなーい」
「お前は差がありすぎるんだよ」
 
 
この間私は常に笑顔である。ボールの空気…まぁ気になったら向こうから言ってくるか、とさっさと空気を入れ直す。にしても外面がいい、ねぇ。否定はしないけどちょっと傷つく言葉だ。
 
 
「はい、硬さ確認してもらえる?」
「…ん、丁度いい。ありがとな」
「ううん気にしないで。練習頑張ってね、って痛っ!」
 
 
出来る限りの綺麗な笑顔を向けるとデコピンが飛んできた。何故だ。地味な痛さに澤村を睨むと満足げに笑われた。
 
 
「その顔嘘くさいからヤメロ」
「えーサービスだよサービス」
「今のどこにサービス要素があったんだよ」
 
 
喉をくつくつと鳴らして、今度こそ澤村は帰っていった。ピンと伸びた背筋は遠目にも落ち着きがあって頼もしい。…なんか悔しいから今日は澤村ばっかり見ててやろうかな。ちょっとした嫌がらせだ。
 
長すぎる視線に気が付いた澤村にまたデコピンされるのは、それから数分と立たない時だった。
 
 
 
 
 

見て、
観て、
視る。

 
 
(見てるだけなのに)
(集中が切れるんだよ)

 
 
 



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