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!日向と影山と女装話




「日向、ちょっと話があるんだけど…いいかな?」
「え、」


隣から影山の鋭い視線が刺さる。何でコイツが、という雰囲気をあからさまに醸し出してくる。俺の方こそ何でか聞きたい。

若干きょどりながらいいですけど、と答えたら、恥ずかしそうに俺の横に回ってきてびっくりした。どうやら耳を貸せということらしい。少し先輩の方に体を傾けると肩に手が置かれ、ふっと掠める吐息が、心臓に、悪い。


「あのね?」
「は、い」
「日向って、女装とか、興味ない?」
「……………
………ハイ?」
「私日向ならいけると思うの!で、メイドかナースかチャイナ服でどれか―――」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」


1から話を聞くと、今度の文化祭で行われる女装・男装コンテストにうちの部活も代表を1人出さなきゃいけないらしい。毎年恒例で体が細い1年限定。
そして選ばれたのが、まさかの俺だった。


「む、無理無理無理ですって絶対気持ち悪いですって!」
「でも一番背が低いし。去年はアイドル系が優勝したから」
「ノヤっさんがいるでしょ!」
「そのコンテストの司会、ノヤなんだよね」
「ええええ…」


とりあえず見てみてよ、と渡された袋を覗き込んだ。
カラフルなキラキラの布、レース、猫耳、フリフリのカチューシャ…がぎゅうぎゅうに詰め込まれているのを確認し、そっと袋を閉じる。


「どうだった?」
「無理です」
「えー!?ほんともう日向しかいないのお願い!!」
「だってこんな…はっ、去年は誰がやったんですか!?」
「田中がノリノリでアイドルのモノマネやった」
「田中先輩!?」
「あのミニスカセーラーは見物だったわー」


ミニスカセーラー。無理だ。万が一にも耐えられる気がしない。


「ね、お願い。優勝したら何かご褒美あげるから」
「嫌です!」
「ええー…あ、一人で着るのが嫌なら私も着てあげるから。駄目?」
「え」


先輩のコスプレ…ちょっと、いやかなり、見たい。
でもそのためには女装という高すぎる壁が待ち受けている。


「本番の時は流石に無理だけどさ、皆にお披露目するときなら私も頑張るから…!!」
「うっ…」


女装と先輩のコスプレ。俺の中の天秤がどんどん後者に傾いていくのが分かる。でも皆にお披露目って、明らかにノヤっさんや月島がからかってくるに決まってる。どうする俺、どうする…!!


「おい、さっきから何の話してんだバカ日向」
「うるせーよ!俺は今人生の分かれ道…に…」
「…何だよ、ジロジロ見て」


あったじゃん、3つ目の選択肢。


「先輩、こいつじゃダメですか?」
「えー?影山かぁ…。まぁ綺麗な顔してるけどさー」
「確かに愛想はないけど、ほら、そういうの好きな奴もいると思うんですよ!ちょっとM入ったみたいな!!」
「おいそれどういう意味だ」
「体格だってそんなごつくないし!」


無我夢中で訴えると、先輩は真剣な目付きになった。
スチュワーデス…いや違う、婦人警官?ううんそれも、などとぶつぶつ呟いたかと思うと、飛び上がるように体を起こした。


「ロングチャイナで肩に羽…!これだ!!」
「は?何がですか?」
「上手くいけば迫力美人になるかもしれない!よしやろう影山くん!」
「え、ちょ、どこに連れてくんすか!?」
「女の中の女になるのよ!!」


そうして男子バレー部はトロフィー、影山は一部の生徒による熱烈なアンコール、そして俺は無事に先輩の秘蔵写真を得ることが出来たのだった。

因みに影山の機嫌はツルツルに剃られたすね毛が生え揃うまで戻らなかった。合掌。




2013/04/23.
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