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「エドガァァァァァ…」

間延びした私の声が馬鹿でかい部屋に響いた。私が名前を呼んだこの部屋の主はかわいいかわいいなまえと言う名の恋人を置いて何処かへ行ってしまった。(つまり私。)

「エドガァァァァァ……」

もう一度彼の名前を呼ぶもののやっぱりエドガーは来ない。
お前人を誘っといてどこに行ったんだ…あの野郎…。
未だに顔を見せない、どこに居るかも分からない彼に対し、はあ……と私は深く息を吐いた。



暇潰しに、とメイドさんに渡された雑誌を何度か読んでからエドガーはやっと帰ってきた。

なまえ…?と怪訝な顔をしてエドガーは私の名前を呼んだ。
おいてめえまさか人を呼んどいて俺忘れてましたパターンか。ふざけんなよこんちきしょうめ。

しばらくその顔で私を見つめていたエドガー、私が「エドガー…」と少し恨めしそうな声で呼びかけるとハッとした表情をして、その後に「すまない、忘れていた様だ」と呟いた。

「エドガーあんたねぇ!!馬鹿じゃないの!!?人の事呼び出しておいて忘れたとか!しかも恋人を!!何時間も!」

「だからすまないと言っただろう、なまえ」

「謝れば良いって問題じゃない!馬鹿!」

「どうせ休日だ、なまえの事だから暇をしていたんだろう?どこに何時間居ようとあまり変わらないじゃないか」

着ていたコートを脱ぎながらエドガーはそう言って私を嘲り笑った。

妙に流し目をするもんだからむかついて私は持っていた雑誌を思わず、おもわず!!
エドガーの顔に向かって投げつけた。
きっと彼のファンが聞いたら失神ものだろう、傷がついたらどうしてくれるんだ!と言いながら。(それくらい彼の顔は整っているのだ。)

とまぁ雑誌を投げたのはいいのだが、エドガーは避けることなく髪を結い上げていた。私が投げた雑誌はエドガーの手前で威力を無くし重力に逆らうことなく床にバサリと音を立て落ちた。



「……ファアアアアアアアアック!!!お前なんか潰れとけ!大事なとこが!!」

「レディがそう言う事を……っとレディなんか居なかったな、」

「このやろっ……!!」

もう手元に投げるものがないので彼に殴りかかろうとしたが、なんだかあほらしくなってベッドに勢いよく横たわった。ああ、私大人。流石。

私がエドガーの相手をしなくなった事で彼は手持ち沙汰になったらしくかちゃかちゃと音を立て、大人しくコートをハンガーに掛けていた。
ハンガー一つでも、私が使ってる安っぽいプラスチックのハンガーじゃなくて良い物だって分かる。
流石女王様直属、金持さんオーラムンムンじゃない。

「はぁ…」

「どうしたんだ?」

いつの間にか服をラフな物に、着替えていたエドガーは先ほどの私とは打って変わってゆっくりとベッドに腰掛けた。
まあ、ラフといっても結構かっちりしているのだけど。

「なーんでも、金持さんは良いよねーとか思ってないし?」

ふんっ、と鼻を鳴らし私はエドガーから視線をずらした。

「馬鹿か、」

エドガーのため息と、ベッドのスプリング音が聞こえる。

視界が少し暗くなったから、多分エドガーが私に馬乗りになったのだろう。

「なまえは今のままで良いんだ」

そう言ってエドガーは私に顔を近づけて優しく唇を重ねた。

来た、私は内心ほくそ笑む。

そのまま勢いよく彼の股に向かって足を蹴り上げた。


「――――っあ!!!!」

「馬鹿が見るー」

んべっと舌を出し間髪入れずもう一度蹴り上げる。

足にちょっと柔らかい感触、んぎゃあ気持ち悪い。

「――私は怒ってるんだからね……馬鹿」

未だに私の上で悶えるエドガーを押し退け、私は優雅に彼の部屋を出た。

ざまあ見ろ!






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