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※トリップ主、小話。



カコーン。その内鹿威しの音が聞こえるんじゃないかって程豪華なお庭の縁側に座って、わたしは団子をかじっていた。

「ねえねえニートボンボンバカ殿クソヤロウー。」

「あぁん?何か言ったか。」

「はい、殿の事べた褒めしてました。」

「ん、あ。おぉ、そうかよ……。」

たった今わたしと話をしているこの男の人は尼子晴久、もといニートボンボンバカ殿クソヤロウ。
今、このニートボンボンバカ殿クソヤロウと八ツ時の時間を楽しんで居るのだが、どうもため息を吐きたくなる。これは吐きたくなるだろ。
だって戦国時代の一国の城主が、未来から来たチンケな女子高生にニートボンボンバカ殿クソヤロウとかなんとか言われて適当にはぐらかされて照れて頬をポリポリって掻いてるんだよ。
ポリポリって!!ポリポリって!!アホな子だな!!わたしがバカ殿って言ったん聞こえんかったんかな……。恐ろしや……。
まったく、殿の癖にアホな子とか引くわー。一国のお殿様がアホな子とかわたし中世の日本史嫌いになるよ。
ん?でもいや、ちょっと待てよ。アホな子ってのも可愛いかもしんない。
この男、顔はイケてるメンズだし。ギャップ萌え狙えるんじゃないのかな。

「殿はギャップ萌えですね。」

「は?……んん、あぁ、確かに俺はぎゃっぷもえだよな。」

からかい甲斐のある殿だし、ちょいとからかおうと訳の分からない言葉であろうギャップって言ってやったら案の定これだ。
どや顔で腕を組んでわたしを見てるけど、殿絶対ギャップの意味分かってないよなー。見栄張ってる見栄張ってる。ギャップの発音がたどたどしいし。


「殿は可愛いですね。」

「なまえは可愛くねぇもんな。」

「いやいや、ルックスだとわたしの方が可愛いけど殿の場合は中身が可愛いから。」

「るっくすも俺の方がイケてる。」

「だって殿とか夢に迷いな。っつってめっちゃノリノリで言ってるじゃないですかー!ハァアアアン萌え!!ギザかわゆす!!!」

「いんや、俺の方がギザかわゆす!」

ズズズズー、達筆な字で晴久専用と書いてある真っ白な湯飲みで茶を飲みながらどや顔を決めるこの男は、またしてもわたしに萌えを降らさせやがった。
くっ……なんだこの男……どや顔でギザかわゆすってジョコたん用語使いやがって……。やっぱりコイツ可愛いな。

殿むっちゃかわええええとわたし一人で悶えてると、トン、と木目の床に湯飲みが置かれた。
チラリと隣を見ればニヤリと口の端を上げる、どや顔とはまた違う、悪どい顔をした殿と目が合った。

あ、スイッチ入った。そう感じた束の間、一気に殿の顔が近くなる。
「まあ、るっくすがイケてようが可愛かろうが何だっつっても、俺がなまえを貰ってやるからそれで良いんだろ?」
そんな言葉と同時にデコチュー決めて来やがるから、恥ずかしくなってわたしは思わず両手をおデコを押さえる。

それに追い討ちをかけるように殿は「なまえを貰えるのはこの俺くらいしか居ねーだろ。」と耳元で囁いてきた。
「っるっさい……!!なぁ!!」
こんな時の殿に対しては顔を真っ赤にさせて、ドキドキが収まるのを待つしかないのだ。





ひっひっふーひっひっふー。わたしが落ち着いて殿と目を合わせるようになってきた頃には、カッコいい殿はいずこへ、殿はいつの間にかどや顔に戻っていた。

ウン……たまにカッコいいからギャップ萌えなんだよな……。


ポンポンと楽しげな顔の殿に頭を撫でられながらわたしは団子に再びかじりついた。







尼子さん可愛い…(^○^)



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