かたまった。 ボキャブラリーが少ないわたしはかたまったとしか表現仕様がなかった。とにかくわたしはかたまった。かちーんと、体の筋肉が全く動かない。 そうしてごとりと手に持っていた携帯電話が地面に落ちて、その音が虚しく響いた。 ――わたし、一体どういう状況なの……。 さっきまで部屋で携帯弄りながらごろごろして、ポテチ貪ってたよね。えっえっ。ここ何処……?えっ洞窟?暗っしかも土くさっ。 なんだか岩だらけの、ゴツゴツした洞窟?というか、山掘り進めて空洞を作りましたーって感じの。これ何て言うんだろう? とにかく土っぽい洞窟に居て、目の前にはどこかの「やらないか」に出てくるお兄さんが「うほっ、いい男」と言い出しそうな素敵な体をしてらっしゃる男性が一人、手首に枷をはめている状態で突っ立っている。 わたしはそんな男性をぽかんとあほ面で見つめているのだろう。だって、男性もわたしをあほ面で見つめているのだから。 「……お前さん、誰だ?」 いや、お兄さんそれわたしの言葉ですから……。貴方こそ、誰? ――タイムスリップって信じますか……? 大変な事になりました。わたし、ここがどこか分かっちゃいました。ええ、わたしがさっき居たところと全く違いました。ついでに時代も違いました。 ここ、ドラマの撮影とかじゃなかったなら、どうやら戦国時代の……九州っぽいです……。 いやふざけんなよてめえ殴ってやらあバコーンな状況です。やばいですね。 目の前に居るこの男性、名前を黒田官兵衛さんと言うらしく、なんかね。ちょっとお話したら職業が戦国武将らしい事がね、判明しました。 ……、冗談じゃない。わたしは歴史に全く学が無いから黒田官兵衛が誰かは知らないけど、黒田って名前は知ってる。 福岡になんかそんな武将さん居なかった? つまり、この男性が嘘をついてたりわたしの知識が間違ってない限りわたしは、まさかまさかの戦国武将さんの所に、タイムスリップをしちゃったようなのです。 「いやあ、まさかまさかあの黒田さんとはーすみませんねえ、無礼だったかもしれませんが、まあ斬らないで下さいよーハッハッハッー。」 「……いや、小生は構わんよ。」 現状を把握したわたしは、変なとこに来た!!と思うよりやべえ無礼だ!極刑や極刑!ひいいわたし死ぬううううなんて思考がぶっ飛んでしまい取り合えず黒田さんに謝っておいた。 うわー改めて考えると、わたし大丈夫か。戦国って戦国って。自室で欠伸したら戦国にタイムスリップしちゃいましたって。 そんな頭大丈夫か。一番良いのを頼むよな。帰ったら病院行こう。ウンウン、もうすぐ受験生でちょっとメンタル疲れたのよね、分かる分かる。 「えっと……、お前さんは、一体……?」 「いやあ、わたしが聞きたいですねー。名前はなまえと申します。年はぴっちぴちの17歳です!」 最後にキラッと星が付くようにして言えば、黒田さんは「ぴっちぴち?」と頭にハテナを浮かべていた。 えっ、マジ。ぴっちぴち通じないのこのおっさん。 うわー時代の差感じるわー。 後々思えば時代の差の域越えてるような、気がするのだが。 -------------- ミステリック 20110222 |