貴方に手紙を綴りたい。 正直に言うと、私は貴方が思うより勇気が無く取るに足らない女です。 だから普段から貴方に愛の言葉も囁けないし、抱きしめる事も出来ないのです。 以前貴方はその事について疑問を覚え、私に問い詰めて来たのを覚えていますか? 私は曖昧な返答しかしてなくて、貴方に大変心配をかけたと思います。 貴方が何を言おうとも私は中々貴方に本心を出せないだろうな、と思うのです。 勿論努力は致しますので長い目で見てやって下さい。 ところで、この手紙に同封しているシロツメクサで編んだ指輪を見ましたか? 私はまだまだ学生だからお金が無くて高価な物は買えません。 買うくらいなら作った方が良いだろうなって、不恰好だけど作ってみました。 シロツメクサが、分からなかったら調べてみて下さいね。 きっと、すぐに分かります。 私はこの春で貴方と離れる事になるでしょう。 それは凄く寂しい事だし、同時に新しい関係を築くチャンスになると私は考えます。 ハジメくん、何故私が手紙を書いたのか分かりますか? 答えは今から書く事を伝える為だけに、です。 (前置きが長くてごめんなさいね。) きっと卒業したら私達の接点は無くなるでしょう。 連絡が段々取れなくなって自然的に別れてしまう、自然消滅と言う切ない別れかたになるはずです。 だけどそれは‘今のままなら’の話です。 良いですか?ハジメくん。 よく見て、よく考えて下さいね。 ハジメくん、私は貴方と――――――。 くしゃりと紙が潰れた音が聞こえたけれど、気にせずに走る。 (先程俺を見送りに来ていた彼女が別れ際に押し付ける様にして渡してきた手紙だ。) 握りしめてしまった紙には小さく、本当に小さく彼女の本音が書かれていた。 この春から互いに違う世界を持つ俺達。 きっと彼女は本音を押し殺して、俺の邪魔をしないようにと我慢をしていた。 そんな彼女が漏らした本音。 いつかの事か、俺は我が儘な奴が苦手と彼女に言ったような気がする。 別に深い意味は無いし、彼女からの我が儘は嬉しい位なのに、 きっとあいつはそれを覚えていて俺に嫌われまいとして、最後の最後まで黙っていたのだ。 「ちっく…しょう…!」 中々、彼女の所にたどり着けなくて『俺フライト時間絶対間に合わねえだろ。』と頭の片隅で思いながら全力で走った。 そろそろ膝も笑いだした頃、俺はやっと彼女を見つけた。 どこまで歩いてんだよこいつは。 「待って……っての!こんのっ……はぁ、大馬鹿っ!!」 ありったけの息を吐き出して叫んだ。 彼女は大きく肩を揺らし、恐る恐る振り向いて、 「ハジメ…君?」 俺の名前を読んだ 「えっ?ハジメ君本物?偽者じゃないよね?あれ、飛行機は?あれ?」 頭にたくさんの疑問を浮かべながら俺に問いかけてくる彼女。 「ああもう馬鹿じゃねーの。」 「えっ?何?何が!?」 「手紙だよ馬鹿! 俺がっあんたを!離すわけねえだろっ」 息を荒らげつつも彼女の肩を掴む。 手紙読んだんだ、と緊張感もなくへらりへらり笑う彼女。 ああ、こいつだこいつが良い。迷わない後悔しない。 飛行機のフライト時間をちらりと思い返しながら俺は一世一代の告白を 「俺と、ずっと一緒に居ろ!!」 目を丸くして驚く彼女に俺は続けて、手紙に指輪なんか無かったと伝えると、頬を染めながらポケットをまさぐった彼女は、確かに不格好なシロツメクサの指輪を取り出したのだ。 「改めて、ハジメくん。 私と一緒に居てください…!」 言葉が終わらない内に、俺は彼女を強く抱き締めた。 ―― PM夢企画さまに参加。 ありがとうございました 101220 |