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東西南北の人という言葉は豪炎寺くんのためにあるのかもしれない。
豪炎寺くんは私の幼馴染。いたって普通な私とは違って豪炎寺くんは少し変わっている。
彼はとても寡黙な人だ。私が騒いでいても菩薩の如く聖母マリアの如く私を優しく静かに見ている人だ。(ちなみに豪炎寺菩薩くんになると悟りまくるのだ。)
そして頭が良い。とても良い。学校で100点をいっぱいとった事がある。ちなみに私は50点ならいっぱいとった事がある。
そんな豪炎寺くんはお医者さんの息子さんだ。妹が一人居る。お母さんは亡くなられている。
豪炎寺くんはサッカーもする。中学校一年生の頃サッカー部のエースストライカーになった。よく分からないけれどエースなのだナンバーワン。つい最近までバスの料金が子ども料金だった一年生のころにナンバーワン。すごいすごい。豪炎寺くんは凄い人なのだ。

素敵素敵な豪炎寺くんからなぜ東西南北の人という言葉から出てきたのかというと、彼はすぐどこかへ行ってしまう人だからだ。
小学校の頃からよくどこかに行ってしまうことがあったが、中学生になってからまぁ酷い。
最初にどこか見知らぬ中学校に勝手に何も言わず転校しちゃったり、その中学校で落ち着いたと思ったらいきなり宇宙人が来て(私の学校にも来た)その宇宙人倒しに行ったり。しかもサッカーで(端から聞くと意味分かんないし)。
宇宙人を倒した豪炎寺くんはサッカーの世界大会にいくことになった。そこでもまたトラブルがあって豪炎寺父上がサッカーやめて医者なれドイッツランド行けなんて事言い出した。
結局豪炎寺父上は豪炎寺くんにお前はサッカーやるべきだみたいなのを言ったらしくただいま豪炎寺くんは外国に行っております。オイオイまたどこか行くのかよ、何て思った暁、東西南北の人という言葉を知った。そりゃあ豪炎寺くんしか出てこないだろう。



以上の内容の豪炎寺くんに対する愚痴だけ抜き取り早口で捲くし立てて豪炎寺くんに電話で伝えた。豪炎寺くんは小さくすまないと言って、その後間をためてお前が寂しいのに気付かなかっただなんて言ってきた。
電話越しに豪炎寺さん言いますね!!と甲高い男の子の声が聞こえた。
何だか途端に恥ずかしくなった。
「べつにさびしくて電話かけたわけじゃないんだよ…ただ豪炎寺くんにぴったりな言葉を覚えたから自慢するために電話かけたんだよ…」
恥ずかしくなったせいか声が小さくなる。
豪炎寺くんは小さく笑った。もっと恥ずかしくなった。
「帰ったら、何して欲しい?」
豪炎寺くんにサディスティックなスイッチが入った。少し、声のトーンを、落として、耳がうずうずする様に問いかけてくる。心なしか、口調もサディスティック尚且つエロティックな感じになってしまった様だ。
「い、わ…ないし」
「…………」
「…………」
豪炎寺くんはすっかり黙ってしまった。お互いの吐く息と、豪炎寺くん側から聞こえる騒がしい声しか音がない。


「、ごーえんじくんのお家にいきたい」
沈黙に耐え切れなくなって(もともと私は騒がしい人種なのだ)口を割る。豪炎寺くんと一緒にいたいと遠まわしに言えば、また小さく笑った豪炎寺くんはわかった、またな。と言って勝手に電話を切ってしまった。

ぷーぷーと無機質な音をたてる電話。
えっとつまりそれは、肯定は、暫く一緒に居てくれる約束という事ですか。

見つめても問いかけても電話は何も言ってくれなかった。




東西南北の人=放浪者みたいな意味






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