恋敵に破れただけ




ダンガンロンパ、スーパーダンガンロンパ2のネタバレ臭い。
78期生の女の子と左手をアレコレする前のあの人のお話。
雰囲気で読んでください。短いです。

















 息が詰まって苦しい。そんな苦しい中で、それでもわたしは彼の手を掴んだ。

「待って、待って。逃げないでください。」

 彼は濁った目をわたしに向ける。途端に襲われる虚無感、彼らの言葉を借りるならば、これはきっと絶望なのだろう。
昔には戻れないことを突き付けられたようで、どうしようもなくて、わたしは自分の首を掻き切りたくなる。

「駄目なんだよ。ボクはもう、彼女を絶望的に愛してしまったんだから。」

彼女、絶望の根源、江ノ島盾子。
希望を絶望的に愛していたのにも関わらず、絶望を絶望的に愛してしまった、彼は今、その事実に絶望している。
江ノ島盾子を愛していることに絶望し、そして江ノ島盾子を殺すことを希望としてわたしの元を離れようとしている。

「嫌です。先輩。言ったじゃないですか、あなたは、もう不幸と幸運に惑わされないって、わたしとならあなたの中の希望を見失わず生きていけるって、言ったじゃないですか。わたしは、あなたの言葉があったから、こうして今、生きているんです。行かないでください。希望は今も、わたしの中に、先輩の中にあるんですよ」

そう言うわたしの、あの絶望ばかりのコロシアイで得た、もう消えないと思っていた希望の光は消えそうになっていた。
 彼はそんなわたしの心を見透かしたようで、わたしの身体を突き飛ばし、そうして狂ったように笑い出す。
尻餅をついたわたしは彼によって整備のされていない、荒れたコンクリートの上で仰向けさせられる。
細い腕が力強くわたしを押さえた。潰れた喉から出すような掠れた笑声が真上から落ちてきて、焦点の合わないグレーの瞳を見たのを最後に、悪意の隠った黒によって視界を塗り潰される。
残るのはただ、絶望だけ。








(希望と絶望を掛け合わせたとしても絶望しか残らないお話でした。)
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