麻生と賛同者×2

 休み時間、隣の席の麻生くんは同じ野球部の関くんと携帯の画面を眺めていた。

「あ、その写メ野球部?」
「お? ……おう」

 私の存在を認めた麻生くんが頷く。
 携帯には、画面びっしりに野球部の面々が写っていた。中心にいるキャプテンの御幸くんを取り囲むように、みんな笑顔でガッツポーズをとっている良い一枚だ。

「な、ちょっとこれ見てみろよ」
「ん?」

 関くんがその画面の左端を指した。

「あー、この人だけめちゃめちゃブレてんね。せっかくみんないい笑顔なのに。……ん? これって……」
「な?」
「麻生くん?」
「うるせーな! 急にカメラ向けられたんだからしょうがねぇだろ!」

 麻生くんは不機嫌そうに怒鳴りだした。すると、関くんは画面を操作して

「ところがたまたまじゃないんだな。ほら、これ」
「……あ」

 それは先ほどの場面のもう一枚目らしく、面子も同じだ。けれどそこに麻生くんらしき人は見当たらない。

「麻生くんどこ?」
「ここ。ゾノの後ろに頭だけ写ってるだろ?」

 よくよく目を凝らしてみると、前園くんの背後から、わずかに麻生くんの特徴的な前髪だけが覗いていた。

「今度はモロ被りかー」
「な! ひどいだろ?」
「ね! ほんと!」
「そんであとこれ……」

 と、関くんはさらにもう一枚を呼び出した。

「あ、今度はきちんと収まってる……けど、ひどい半目」
「な! 怖いだろ!」
「ね! 元々の怖さも相まってね!」
「……てめぇら、人をバカにすんのも大概にしろ」

 麻生くんの方を見ると、明らかに目をつり上がらせて怒っていた。

「麻生って昔から写真撮るといつもこうなんだよ」
「二人は小学校からの付き合いなんだっけ」
「な!」

 関くんが麻生くんに同意を求めるも、麻生くんはふいっとそっぽを向いた。

「こいつ昔から何かっていうとタイミング悪くてさー。いっつも席替えの時、前ばっか引き当てるし。あと、俺が喋ってても監督からは注意されないのに、麻生だったら「静かにしろ」とかさ」
「あ、わかるかも。この間、購買で焼きそばパンの最後の一個を倉持くんに奪われてたよね」
「あと『二人組作れ』って言われると、なぜかいっつも余ってんだよな!」
「いるいるそういう人!」
「おい、ふざけんじゃねー! いい加減にしろ!」

 麻生くんは更に声を荒げたが、私たちは無視した。

「そういえば、麻生くんのテーマソングは『女々しくて』なんだっけ」
「テーマソングって言うな! ヒッティングマーチって言え! まるで俺が女々しいみてぇじゃねーか」

 麻生くんが猛然と抗議する。

「な! タイミング悪くて女々しくてつらいんだもんな!」
「つらくねーよ! そもそも女々しくねーし!」

 私はそんな麻生くんの様子を見て吹き出した。そして関くんの方を向き、

「じゃあ関くんは、そんな麻生くんを昔からフォローしてるんだね」
「うーん、フォローっていうか……見てておもしろいじゃん? な!」
「『な!』じゃねーよ! おもしろいってなんだ!」
「あー、なんかわかるかも。じゃあ私も関くんの二番煎じで行こう。私は『ね!』で。ね!」
「な!」
「ね!」
「うるせー!! お前ら人をおちょくりやがって!」

index / top

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -