青道高校野球部交換日記 1・結城編

 ーーそれは、ある日突然はじまった。
 俺が新チームのキャプテンに任命されて一週間が経った頃だった。チームメイトと意見が合わず、チーム内での喧嘩が絶えなかったある日のこと。

「結城くん、伊佐敷くん、増子くん。主将、副主将内で絆を深めるために交換日記しなよ!」

 マネージャーのみょうじが、満面の笑みで可愛らしいピンクのノートを俺に差し出しながら言った。こうして、俺たち三人の奇妙な交換日記がはじまったのである。




8月X日 ○曜日 天気 晴れときどき雨
担当 主将・結城哲也

 トップバッターは主将である俺だ。さて、何から書こうか。日記なんて実に小学校の夏休み以来のことだ。ましてや交換日記などというものは女子のものだと思っていたから、男子の俺が何を記して良いかなんて皆目見当がつかない。
 とりあえず、これを始めるに至った経緯を振り返ってみようか。
 確かにここ最近のチームメイト内には、いささか不穏な空気が漂っている。我の強い奴らばかりだからな。仕方ないだろう。そんな中、助言をくれたのがマネージャーのみょうじだが。
 純がこの試みに反対した時、みょうじはいきなりどこからともなくバットを持ってきて素振りをはじめたな。

「みんな、今までのトレーニングでずいぶんお尻引き締まってきたよね」

 みょうじが笑顔でこう言った意味が、最初俺には全くわからなかったんだが......
 「ケツバット」というものはかなり痛いのか、純? あの時のお前は柄にもなく震えていたな。子犬みたいだったぞ。確かにみょうじは、マネージャーにしておくにはもったいないくらい良いスイングなのは認めるが。バラエティ等の罰ゲームでよく用いられるとのことだが、あいにく俺はバラエティを見ないのでよくわからない。
初めて聞いた時、俺はそういうトレーニングがあるのかと思っていた。尻にバットをはさんで......いや、やめておこう。普段の練習でも気力と体力を要するのに、架空のつらいトレーニングを想像したところで何になるというのだ。俺たちには実践あるのみだ。

 ああ、ノートがなかなか埋まらないな。そうだな、最近の俺のお勧めの時代劇について書いてみようか。最近俺がよく見ているのは「水戸黄門」だ。まぁ時代劇の定番と思われるだろう。しかし侮ってはいけない。定番の中に潜む人生の格言を

 (長いので以下略)

 ということで「水戸黄門」の魅力は伝わっただろうか。忙しいとは思うが、みんなにもぜひ見てもらいたいと思う。
 だが少し話が逸れてしまったようだな。本題に戻ろう。野球部のことだったな。寮の食堂内では今「カレーラーメン」が神級にうまいとのことだか......俺は通いなので食べられないのが非常に残念だ。それはカレーうどんとどちらがうまいのだろうか。その前は確か「黄金の唐揚げ」だったか。俺は合宿の時しか食べられないからな。チームメイトとおいしい食卓を囲むというのはたまに羨ましく思う時がある。
 行も残り少なくなってしまった。お前たち、明日も厳しい練習だとは思うががんばろう。

 ところで、なぜこの日記に亮介も参加しているんだ?


 *伊佐敷編へ続く

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