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街でマルコを見たのは、偶然だった。
「忙しいから」と言う理由でここ2週間ほど会ってない恋人を見かけて、声をかけようとするのは当然だ。私だってそうしようとしてた。
―――マルコが女の子と腕を組んで仲むつまじく歩いてなければ。

「なに、来てたのかい?」

自室の扉を開けたマルコが私に気付いて言った第一声はそれだった。マルコの部屋に無断で上がり込んだのだから当たり前だけど、私を拒否されてるみたいに思った。
私は黙って、テーブルに指輪を置く。コトリと無機質な音が響いた。マルコはまだわかってない。頭の上にクエスチョンマークが見える。
でもそんなマルコを気にかける余裕はなかった。あれを見てから1週間、やるなら今日にしようと自分に誓ったから。

「ね、別れよう」
「は?」
「は、じゃなくて。別れよ、」

マルコの目が見開く。指輪と私を何度も見た。

「…ちょっと待てよい、急に」
「別に急じゃないわ。前から思ってたことだもん」
「……とりあえず、話を、」
「話すことはないし、聞くこともない」

とうとうマルコは黙ってしまった。悪者は私のような気がしてきた。悪いのはあなたじゃん、と叫びたくなった。

「…俺のことを嫌いになったのかい?」

唐突にマルコがそう言ってきて、私は一度呼吸を落ち着かせる。
嫌いになった?そんなわけない。私は今でもマルコが好き。ただ、一方通行な愛が嫌いなだけ。

「嫌いになったのはマルコの方でしょ?」
「は?意味わかんないねい」
「この前腕組んで歩いてた新しい彼女、」
「っ!?」
「大切にしなよ」

マルコが呼吸を少し詰まらせてから髪を触る。焦った時の癖。
そんなことを知ってる自分が情けなくなる。私はここまでマルコのことを知ってるのに、なんでなんでなんでなんでなんで。

ガタンッ
勢いよく立ち上がったら、テーブルに膝をぶつけた。その拍子にテーブルにあった指輪が床に落ちた。
ああ、私はもうここに居ちゃいけないんだとなんとなく感じた。

「さようなら」

急いでマルコを部屋を出ようとしたら、ブーツの靴ひもを踏んづけてほどけてしまった。結ぼうとしても焦ってなかなかできなくて、じれったく感じた。
その間にマルコが背後にきたのが気配でわかった。でも、振り向いちゃいけない。
「待て」と言わないのはマルコらしい。そして同時に有難い。そんな甘い言葉をかけられたら、離れられなくなる。
カチャリ、扉を開けた。

「ねえ、きっとマルコは気付いてないかもしれないけど。本当は私達、今日で付き合って2年だったの」

息を飲むマルコの音を聞いて、私はそのまま扉を閉めた。

「…大嫌いよ、マルコなんて」

パタンと無機質な音をたてた扉を背に、そう悪態を吐くのがやっとだった。それでも、面と向かってマルコに言えない辺り、自分の未練さが募ってきて。

「……っ、」

今更、涙なんて。
別れようって言ったのは私じゃない。
今までの2年間を想うと、涙は止まることを知らないけど。涙を乱暴に手で拭って、私はやっと1歩を踏み出した。





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