1日目

この時間帯の電車は酷く混んでいる。所謂、通勤通学ラッシュだ。サラリーマンや学生でごった返す車両に「ばあさん、ここ座りな」なんて、何とも心暖まる台詞が聞こえてきて、なになにどんな好青年なんだろうとおじさんとおじさんの隙間から覗いてみると、なんと声の主は学年一の不良と悪名高いユースタス・キッドだったので、わたしは思わず声を上げてしまいそうになった。


2日目

学校帰りにたまたま寄ったコンビニで、またしてもあの不良、ユースタス・キッドを見かけた。お釣りをレジの横の募金箱に入れている姿を見て、やっぱりあいつは良い奴なんじゃないかと思い始めた。だがしかし、制服のくせに堂々と煙草を吸う辺りやっぱり不良なんだろうと思う。


3日目

大嫌いな数学の授業中、ふいにグランドの方に目を配ると、一際目立つ真っ赤な頭を見つけて、内心笑ってしまった。不良のくせに、真面目に準備運動をしている所がやけに面白かった。


4日目

今日はユースタスを見なかった。だからと言って、どうってことないんだけど。


5日目

早起きしたからと言って、呑気に髪なんて巻くんじゃなかった。おかげで遅刻しそうだ。駅から学校までの道を猛ダッシュ。だがしかし、ケープをぶっかけた髪の毛は一向に崩れそうにない。足の方に限界が来そうだ。そんなとき前方に赤を見つけて、思わずにやけてしまう。何故、にやけるんだ、わたし。不意ににやけた自分がバカバカしくてスピードを上げると足が縺れて派手に転んだ。調子には乗るべきではない。だがしかし、「大丈夫か」なんて差し伸べられた大きな手の持ち主に、わたしはまたにやけてしまった。たまには髪を巻くのも、転ぶのも、調子に乗るのもいいかもしれない。


6日目

すぐ近所のガソリンスタンドで、バイト中のユースタスを見かけた。意外と近所に住んでいるのかもしれない。


7日目

天気予報は時に当たらない。雨が降るなんて聞いていない。無性にアイスが食べたくなった数十分前のわたしを恨んでやりたい。ざあざあと降り止まぬ雨を前に呆然と立ちすくむわたし。300円のビニール傘を買おうか買うまいか悩んでいると、「おい」と何処かで聞いたことのあるような声に降り返ると、これまたびっくり噂のユースタスではないか。ユースタスは相変わらずの強面で、だけども優しい声で、「傘入ってけ」と笑った。この時ばかりは、無性にアイスが食べたくなった数十分前のわたしを誉めてやりたくなった。


真っ赤な髪の不良に惚れるまでの7日間



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きせきさんが90000hitで記念フリー小説を置いていたので、いただいてきました。
キッドが素敵すぎですね。不良のいいところって、なんであんなにキュンとするんでしょう?
書き方が斬新で尊敬しました!90000hitおめでとうございます。


110401
ゆに



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