ローはその言葉にやっとユイを見やった。
その時彼の目は細められていて、変な質問をしたから睨まれているんだとユイは感じたが、実際の所はやっとそれを聞いてきたかと呆れを含んだ目線だった。

「いい女を着飾って隣に置いておくのに、理由が必要か?」

ニヤリと余裕そうに笑うローだが、いつも物事を自分の思う通りに進めてきた彼にとって今回の出来事は少し予想外の部分もあった。
それは、思ってたよりもユイが綺麗だったということだ。
彼ほどの経験を持ってすれば、身体のラインが分かり難いつなぎ姿からでも彼女の抜群なスタイルを予想できるし、化粧っ気のない毎日見飽きた顔も並の人たちより十分に愛らしいことも知っていた。

しかしここまでいい女だったとは。

予想と違うことが起こるとすこぶる機嫌を悪くするローだが、この誤算は逆に彼の機嫌を良くするものだった。

「なァ、ユイ」

声色に艶が含まれたことに気付いたユイの肩がビクリと揺れた。
その時ローの視界に入ったのは、彼女の腕に映える自分のシンボルであるドクロマーク。
数ヶ月前までは違ったシンボルが彫ってあったという事実にほくそ笑み、優しくドクロを撫でてやれば、ユイの身体は面白いくらいに震えた。
ローは驚いて目を見開く彼女の顎に手をかけ、今までほとんど合わせなかった目線を合わせる。

「…んぅ!」

そのままぱくりと喰べられた耳たぶに、ユイは熱い吐息を溢す。
ローの悪戯から逃れようと動くユイの耳に、上がる口角を抑えきれないままローが囁いた。

「俺の女になるか?」

ま、断っても他の野郎に渡す気なんざないが。
それを聞いたユイの顔は、目の前に置かれたカシスオレンジのように赤く熟していた。



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