カーテンの僅かな隙間から射す太陽で目が覚めた。ちょうど目の位置に光が来るから、起きてすぐはチカチカする目を瞬きさせて。

「…あれ?」

それで気付く。隣に居るはずのローが居ないことに。
少しだけ暖かい隣のシーツはさっきまで彼が傍に居たことを示していて、滅多なことがないとわたしより早く起きない彼に不思議に思って立ち上がる。

「あ、居た」

リビング、キッチン、トイレを順番に覗いてもローは居なくて、最後に来た洗面所に彼は居た。うっすら生えてる髭を整えているローと鏡越しに目が合う。

「おはよう。今日は早起きなんだね、珍しい」
「あァ」
「もしかして手術が入ってるとか?」

ローは凄腕の外科医らしく、急に手術に呼び出されることも珍しくない。その時の彼はびっくりするほど早起きだし、きっと今回もそうなんだと思った。
手術が入る日のローはたいてい帰りが遅い。もしかしたら今日も、日付が変わってから帰ってくるかもしれない。そう思ったわたしは、思わずローに抱きついた。髭の手入れの邪魔をしないようにそっとしたつもりだったけれど、ローの目線はこちらに。

「どうした?」
「今日の分充電しようと思って」

あと半日以上は会えないんでしょ、声のトーンを落として言えば、ローにくつくつと笑われる。くっついているから、ローの背中から振動が伝わってくる。

「なんか勘違いしてねェか?」
「え?」
「今日は手術なんか一件も入ってねェよ」

むしろ一日休みだぜ?
いつの間にかこちらを向いたローの吐息が耳に触れる。思わずローの顔を見上げるわたしに、すごく痛ーいデコピンが一発。

「っつぅ、」
「勘違いした罰だ」

絶対に赤くなってるだろうおでこを押さえながら睨んでも、彼には効果がないらしい。だからさっきより思いっきり抱きついて、赤いおでこをぐりぐりと押し付けてやった。そしたら、わたしが余計に痛くなっただけだった。

「なにやってんだ」

ローが悪いのに、当人は全く悪びれた様子もなく、ズキズキ痛むおでこを一撫でした。そのままそこに唇を落とす。おでこから全体に広がる熱に狼狽えているとローがまたくつくつと笑った。

「今日は一日、ユイが好きなことしてやる」
「ほんと!?」
「あァ」
「なにしようかなー」
「だからナニ、するんだろ?」

そう言って米俵よろしく担ぎ上げられるわたし。暴れてもビクともしないから、細身の彼のどこにそんな力があるんだろうか。きっと医者には関係ない筋肉がこっそりと身体のどこかに付いてるに違いない。
変なことを考えてたら、いつの間にかベットに戻っていた。上に乗るローが憎たらしい。

「わざわざ戻ってくるなら、ベット出た意味あるの?」

じとりと見上げれば、目元に優しいキスが一つ。そんなことされたらなにも言えないじゃない。
ローの思い通りに進むのはすごく癪だけど、まぁいっかなんて。

「それじゃあ、あらためまして」



title by. joy




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