「ねぇロー、わたしのこと好き?」

ことあるごとに俺に聞いてきたユイ。今までそれに1回と答えたことはないが。それは、言わなくたって通じ合えていると思ったからだ。言葉なんていつでも言える、と。

「船長、あんたが未だに落ち込んでるなんて、明日の天気は嵐ですか」
「うるせぇ」

いつもなら俺の気に食わない台詞を言わないペンギンの台詞も、苛つく言葉に対してすぐに刀に手をかけない自分も、全てにおいて非日常すぎる。

「ベポやキャスケットだって心配してるんだ。その顔を早く直してくれ」
「…それ位わかってるさ、」

これ以上ペンギンに顔を合わせたくないと立ち上がって、縄梯子の方まで歩いて行く。早くいつもの船長に戻ってくれ、背後からの言葉にはなにも返せなかった。
もう目を瞑ってでも歩ける程に覚えてしまった道を行く。記録が貯まってもう2週間。それでもこの島から出航しないのは、やっぱり船員に心配されてる証拠だ。自分たちだって辛いはずなのに、らしくねぇ奴らだ。
少し土の盛り上がる地面の隣にドカリと座る。辺りに供えられてる花の匂いが鼻をくすぐる中取り出したのは、キッチンから盗んだユイが好きだったコック特製ジュース。甘ったるいこの味は大嫌いだったが、最初で最後。付き合ってやる。

「ほら、飲め」

一口だけ飲んであとは地面にかける。盛り上がった土がそこだけ色を濃くする。さぁ、こんなことするのも今日で最後にするか。
航海士に言って、夜にでもここを出航しよう。

「もう会えねぇから言っとく。二度と言わないからよく聞け」

ユイの顔が頭から離れない。こんな時に限って浮かぶのは笑顔なんだ。口の中は甘いけど不快じゃないんだ。世界はこんなにも不条理だなんて。

「愛してる、ユイ」

死んでも言わないと思ってた言葉だけど、お前が死んでる時はどうすりゃいいんだ?

俺の最愛の女は、半月前の戦闘でどっかに逝っちまった。






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