新年を迎え、暖かいココアを飲み終えてから家を出る。向かう先は、海を一望できる小高い丘の上。物心ついた頃に両親にここに連れて来られ、それから私はこの場所で初日の出を見ることに決めている。 ぼーっと漆黒の海を眺めて数時間。だんだんと海の色が変わり、眩しい弧が水平線から顔を覗かせた。
「…きれい」
神秘的な景色に、ほう、と息を吐きながら見入ってると、カサリと草の揺れる音がした。
「島の上から見る日の出もいいもんだな!」
いきなり頭上から聞こえた声にびっくりして上を向くと、自身の能力を使わずともオレンジに輝く彼がいた。
「…っエー、ス?」 「よっ!」
尋ねるでもなく勝手に私の隣に腰をかけ、屈託ない笑顔で笑っている。 なんでこんなところに?とか、私がここに居るってどうやって知ったの?とか、聞きたいことはたくさんあるんだけど。頭に浮かぶだけで口を破ることはしない。 ――だって、私は知ってる。 なんでかは知らないけど、私は彼が笑うと泣きたいくらい嬉しくて。彼が隣に居るだけで心が穏やかになって。それが“今日”という日だから尚更のこと。
「綺麗だなー」 「うん」 「ま、ユイには負けるか」 「あら、ずいぶん口が達者になって帰ってきたのね」
冗談で言ったのに口を尖らせてすねるエースを見てくすくす笑うと、笑うな、と一喝された。そしてエースはそのまま自然な流れで私の肩を抱いた。
「新年おめでとう、だな」 「うん。それと、」 「それと?」 「誕生日おめでとう、エース」
エースの肩にこてんと頭を乗せ、周りに誰も居ないけど彼にだけ聞こえるくらい小さな声で言う。 そしたらエースはそれを待ってた、って笑って、余った手で私の顎を持ち上げた。私の唇に彼のそれをくっつけられて、心地好い太陽の光りが私達を照らしていることに気付いた。
(新年おめでとう&誕生日おめでとう記念で1月10日までフリー配布します)
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