「今日の目的は敵陣視察だ。大きい試合のわりに会場が狭いようだな、気をつけろよ」

「………」

「…ん?どうした、気分が悪いのか?人酔いか?」

「違います。…とりあえず、手を離してよ」

「何を言っている。もしはぐれたらどうするんだ」

「ちょっと、私のことをいくつだと思ってるの。そんなことありえるわけないでしょ」

「もしかしたら、ということを考えてみろ。何かあってからじゃあ遅いんだぞ」

「何もないですついていきます恥ずかしいです」

「何が恥ずかしいんだ?…恥ずかしがる要素なんて無いだろ?」

「嫌だよ、…親子みたいで」

「お、やこ…?」

「君の背が大きすぎるんだよ。端から見たら、…親子だ」

「はは…、そんなことはないと思うけどな。ま、あって兄弟だな」

「だったらなおさら嫌だよ。兄離れしていないみたいじゃないか」

…そんなこと、無いけどな、と彼は唸って首を傾げた。わがままだってことは知っている。でも私だってこどもじゃない。彼だけには、…せめて彼だけには、少しくらい背伸びした姿を見てほしい。そんな幻想ばかり抱いていた。


「よし、じゃあこうしよう」


しばらくして、にこりと笑顔を見せた彼。そして、おもむろに私の手を引くので、驚いてバランスを崩してしまう。それをやすやすと受け止め、そのまま指と指を絡ませた。指と指が組み合わさり、ひとつの繋がりとなる。それを嬉しそうに眺めていた。


「な、家族が駄目なら恋人ってことでいいんじゃないか?」


そっちの方がお似合いだろ?彼は小さく呟いて、さぁいこうかと手を引いた。







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