その日は朝から気分が悪かった。頭が痛くて、つらい。がんがんと頭の中を貫くような振動に、眉間のシワは増えるばかりで。…保健、室。その言葉が頭をよぎった。けれどいまは授業中。地味な私には授業を抜け出すなんて所業は不可能に近い。手を挙げて、自己の存在を知らしめると考えただけで痛みが増した。あぁ痛い。痛い、痛い。助けてなんて思ってみても、私の周りの席に座るのは話したことすらない男子。仕方がないと、授業終了の時刻をいまかいまかと待っていた。


「先生」


しばらく俯いて大人しくしていると、隣の男子がすらりと手を挙げた。


「どうしました?源田くん」

「気分が悪いので、保健室に行っても良いですか」

「あらあら、もちろんよ。えぇ…っと、誰か付き添いは…」

「大丈夫です。保健委員に連れていってもらいますから」


…な、いいだろう?と、彼は私をみた。まだ否定も肯定もしないうちに、私は腕を掴まれ早足に教室を飛び出すことになる。しばらく無言で歩いたあと、おずおずと私は保健委員じゃあないよと言ったら、彼は知ってたよと笑った。彼に掴まれた手が、少し汗ばんで。私を引っ張る彼の背中が大きく見えた。





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