「だからな、この問題はこうやって…」 「…ふーん」 「そうしてから、こうすると…」 「…へー」 「こうなるだろ?で、次に…」 あ、佐久間だ。窓の外に見える彼は、マントを纏う男をうやうやしく見つめていた。こちらに気がつかないだろうか。淡い期待を胸に眺めていると、なんと彼はこちらに目を向けた。しばらくじっとこちらを見たあと、見覚えがある人物だと判断したのか右手を掲げた。それを見ていた鬼道くんもこちらに気づき、一度だけ手を振った。私もこの偶然が嬉しくて、さよならと小さくシャープペンシルを振った。そのとき、 「いて」 鋭い痛みが腕に走る。根源である腕を見ると、つねられたらしい部分が赤くなっていて。 「…どういうつもりかな、源田くん」 「なんのことだ」 「うわ、しらを切るのかい」 「………」 源田はあまえんぼさんだなぁっていったら、そんなわけがあるかとあしらわれた。不機嫌そうにむっとする彼の髪が、夕日に良く映えた。 |